032.4. 午後3:41 · 2121年2月22日·Dwitter Web App

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「エコー検査ではお医者様が女の子だって言ってたから、あんたが産まれた時にビックリしちゃって。『多分ちんちんをお股に挟んでたから見えなかったんでしょうねー』だって」


 思い返してみると、事あるごとに母親が口にしていたあれは、次男として産まれてきてしまった俺への恨み節だったのだろう。


 後に産まれた長女に手間と時間をかけるために、いらない次男のどうでもいい感情を、母親である自分にとって都合の良いように決めつけていたのだと考えると、幼い頃の記憶との辻褄が合う。


 お前は嬉しくないのだから与える必要がない。

 お前は怒っていないのだから機嫌を取る必要がない。

 お前は悲しくないのだから寄り添う必要がない。

 お前は苦しくないのだから心配する必要がない。治す必要もない。……さすがに目に見えて分かるときは処置されたが。


 そのようにしていれば、いずれ諦めて静かになる。

 そうして十数年も経てば、親としての責任は勝手になくなる。


 多分そんな風に考えていたのだと思う。



 隣の家庭を見渡せるようになり、自分と母親の関係が普通ではないことに薄々気付きながら、それでも、原因は自分の方にあるのだと、自分を誤魔化した。


 悪いのは自分なのだと。


 母親の全てを許し、愛されるためなら全てを受け入れ、差し出し、年齢だけを重ねていった。



 多分このまま曖昧にしておけばよかったのだろう。

 そのために今まで我慢し続けてきたはずだった。


 でも、自分を愛して欲しくて、自分は家族から愛されているはずなのだと、認めたくて、感じたくて、一度だけ許すことをやめてしまった。


 やめておけばよかった。


 これまで聞こえないように見ないように考えないようにしてきたことを、言葉で、態度で、状況で、今がチャンスだとばかりに、はっきりと示された。


 唯一胸中を打ち明けていた父も、程なくして距離を置くようになり、離婚の嘘と兄の策略によって完全に縁を切られ、帰る場所が無くなり、アパートの部屋で一人になった。



 やっぱり自分は家族ではなかった。



 それからしばらくの間、両親のことを思い出してしまうのが辛かった。

 記憶の中の両親が慰めてくれようとする度に、現実の両親が両親を殺しにやって来た。

 優しく抱きしめてくれたはずの母親が、よくコンサートに連れて行ってくれた父親が、毎日、思い出の数だけ殺されていった。



 とあるニュースを偶然見かけた時から、幾分気持ちが楽になった。

 いざとなったら十分な度数と量のアルコールを飲めばいい。『やってはいけないこと』はインターネットを調べればいくらでも情報が出てくる。

 これのおかげで、残りの人生に悩むことがなくなった。



 働く理由がなくなり、数字が減るだけになった通帳に自分の死期を悟るようになってから、家族への憎しみが溢れ出てきても特に抑えることをしなくなった。


 お前は心を搾取されたまま終わってもいいのか

 あいつらをこのまま生かしておいてもいいのか


 この頃から、最後に自分が何をするべきなのか、何をしたいのかをいつも考えていた。



 自分一人の手で与えられる苦しみの量には限界がある。

 だったら他人の手を使えばいい。

 そのためにはできるだけ凄惨な事件を起こす必要がある。


 後は下種なマスメディアなり、SNSの人間なりが喜々として勝手にやってくれるだろう。

 犠牲になる子供には申し訳ないが、未来もなく沈んでいくだけのこんな国で生きていくよりかは、天国で暮らす方がまだマシなのかもしれない。

 結末をこの目で見られないことだけが気掛かりだが、彼らなら最後までやってくれるだろうという信頼はある。



 最後に、この投稿を見ている人に伝えたいことがある。


 この投稿は、あなたに自殺や他殺を促しているものではない。

 特に、自殺なんて絶対にしてはいけない。

 どんなに辛いことがあっても、理不尽でも、手遅れでも、あなたは社会にとって都合の良い人間として、希望を持って生き続けなければならない。

 社会は、道徳は、経済は、あなたが自殺することを許可していない。

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