023. 幸か不幸か

「……! ……リー! ラリー!」


 誰かの声が聞こえる。

 身体を動かそうとするが、うまく力が入らない。


 なんとか目蓋を動かす。

 マリーとスイレンと、ミコが見えた。


 自分の身体は今マリーに抱えられているようだ。


「……リ……サ……は……?」


「黒い水のようになったままです。今はエステルさんが念のために結界を張り続けています」


 途切れる言葉の意図を察して答えてくれるミコ。


「ラリー大丈夫? ポーション飲める?」


 この声は……スイレンか。


「身体が動かない内はまだ飲ませない方がいいかもしれません。エステルさんと交代してきますから、ヒールで回復しましょう」


 気配が遠ざかっていく。



 さっきからグズグズと鼻を鳴らしているのはマリーか。




 ……そうか。


 なんとか生きて帰ってこられたようだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る