金髪チャンと銀髪チャンとオタクがめぐる異世界生活

@hanasatoan

第1話 オタク出発

築40年のボロボロのアパート。畳には穴が空いていて今にも床が抜け落ちそうなくらい傷んでいる。


湿気のせいか壁に穴が開いているからなのかダンゴムシが歩いている。ムカデも壁をつたっている。


不便な場所だし引越す人は多い。このまえなんかは孤独死した人もいた。

だから自分以外の人間はこのアパートには住んでいない。


近くに大家は住んでいるけど会った事はない。周りには誰もいなくて静かでいい。


独身貴族には堪らない自分だけの時間。朝起きてまずは初音ミクの音楽を聴きながら顔を洗う。軽く朝食を済ませて身支度をする。そして今日は毎月数回は取る連休だ!


そして、録ってあった大好きなアニメを見る。


「今回は気になるやつが多すぎて見るのが大変だなぁ。」


とぶつくさ言いながら残りのアニメは帰って来てからのお楽しみにした。


なにしろ今日から聖地巡りに京都へ行くのだ。


電車やバス、路面電車を乗り継いで目的地を目指すマニアである。


周りからは乗り鉄とか撮り鉄とか言われているがじつはもうやめられない事情があるのだ。


全国の駅4660ヶ所を制覇してアプリを完成させる事が何よりの生き甲斐になっている。ちなみに今は残り200駅となっていて全国125位。


「あと少しなんだけどなかなかきびしいねぇ」


まぁーあとはのんびりと電車に揺られながら景色を見るのも好きなんだけど。


好きな時に適当な駅で降りて街並みを見て楽しんだり、ネットには出ていない店で美味しいものを見つけたりと、結構充実しているしストレス発散にもなっている。


出かける前からそんな妄想をしてたら時間がなくなってしまった。


妄想族は昔から治らないし、ついついボーッとしてしまう。悪い癖だ。


さっと支度を終わらせて家を出る。近くの駅までは自慢の愛車郵政カブでうどん屋や西友を通り、武蔵新城から電車を乗り継ぎ京都へ向かう。


ジーンズにオレンジのギンガムチェックシャツ、そして動きやすいようにスポーツシューズを履いている。


ディーパックを背負っていつでも記録は残せるように肩からは一眼カメラ、腰にはデジタルカメラ、ポケットにはスマホとバッグの中にはタブレット3つと相当重い。


しかし、出かけているからには見逃しは許されないのだ。

あっという間に京都に着き、目的の場所まで在来線を使って乗り継ぐ。


何回来ても飽きないこの場所は久美子ベンチ。アニメの聖地となっている。


いつものように写真を撮りまくり、マッタリしながら目の前の川の流れを見ながらボーッとしていた。


「グーっ」

昼はとっくに過ぎているのに何も食べていなかった。


「腹減ったなー、どこか食べるとこ探すか。」


やっと立ち上がり歩き出す。が周りには何もない。何もないのは知っていたので大好きな電車を乗り継ぎまた違う駅で降りた。


いつものラーメン屋さんで満足して写真を撮ってTwitterにアップする。


満腹で歩きたくはなかった。

でも暗くならないうちにとトボトボとゆっくりと歩き出した。


「そうだこの近くに目的のアレがあったんだ‼️」


と思い出したようにいそいそと早足になっていった。


そこはもう一つの趣味。マンホール写真を撮って集めている事。


夕方ではないが少し日が傾いてきたので早く撮り納めないとと急いだ。

やっと目的ののマンホールがデデーンと王様のように置いてあった。

誰も興味を持たないし見もしないし平気で踏んづけている。


そんな事は構わない兎にも角にも自分の欲求を満たすように無我夢中で撮り続けた。


しかしなかなか気に入った写真が撮れない。


「暗いからかなー、それとも腕が落ちたか?」


なんてぶつくさ言いながら撮っていると靴というか自分の足が写ってしまった。


「あっ失敗した!くそっ!」


しかしよく見ると自分の靴ではなかった。

自分より少し小さくてオレンジのスポーツシューズ。


「あれ俺のじゃない。」


顔を上げて見ると目の前には自分と同じことような格好をしている女性?いや女の子がいた。


年は高校生くらいかその前後。年齢を感じさせないどこか不思議雰囲気を持った子が立っていた。


「アーやっと見つけたー‼️」


「??」


その子もマンホールの写真を撮っている。


「んっ?なんだこの子。」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る