第10話 魔術団所属通訳官
今日から魔術団所属通訳官になったので、魔術団の詰所に向かった。レンを連れてきても良いとの事だったので、猫の姿のレンを籠に入れて連れて来た。場所が分からないので今日は鳥の姿で先に待っていてもらう事は出来ない。
お城の入り口で案内する為に制服をきっちりと着た騎士が待っていてくれた。門を通る出仕して来た者達が騎士が何故ここにいるのか不思議そうに通り過ぎるたびに見ている。
「おはよう御座います、ゆな様。私は本日よりゆな様の護衛の任に就きましたエルンスト・ヒューヴァーです。よろしくお願いします。」
「おはよう御座います、えっと・・・私魔術団所属ですよね?なんで騎士様が?」
「これからゆな様には騎士団1名、魔術団1名の計2名が必ず護衛に就きます。護衛が居ない場合誰にも・・・権力を持っている者にすら付いて行かないようにお願いします。」
「はぁ・・・よく分からないけど分かりました・・・ヒューヴァーさんこれからよろしくお願いします。」
これからは一般の職場じゃ無いものね。行ってはいけない所が多いのかも知れないし、迷子になりそうだから案内として居てくれるなら助かるからいっか。
『ミュナ、昨日も言ったが仕事をせずとも我が全てを与えてやるから帰らぬか?』
「レンに料理をして貰っているんだから、私だってレンの為に何かお返ししたいもん」
『お返しをしてくれるなら、今夜はお前から我を誘え』
「ーーーーーーーーーっっっっ!?!?」
「ゆな様!!大丈夫ですか!?顔が真っ赤ですよ?先に医務室に向かいますか?」
「うぅぅ・・・魔術団に向かいます・・・」
顔を真っ赤にさせたミュナを騎士が心配そうにしているが、レンの言葉が理解できない他の人間に説明のしようもないし説明して自爆したくないので騒ぐ事を止め大人しく魔術団に向かうことにした。
魔術団専用の施設にたどり着き、騎士に付いていきながら通路を進んでいく。
めちゃくちゃ魔術団員がこっち見てくるっ!!恥ずかしいっ見ないでください!!!あぁ・・・一般人が来る事のない所にいるとかめちゃくちゃ目立ってるし!!わ、私もここの制服貸してもらえないかな??
色々と考えているとしっかりした扉の前に着いていた。
ーーーコンコンコン
「魔術団総長、本日より魔術団所属になりましたゆな様をお連れしました!!」
「入れ」
ヒューヴァーさんに開けて貰い中に入ると、昨日名乗っていた2人の総長が室内に居た。ヒューヴァーさんは話し合いの間ドアの外で待機し警備を行うらしい。
ソファーに促されたので座ると
「昨日の彼も一緒に連れて来て良いと言ったが今日は連れて来ておらんのか?」
「連れて来てますよ?」
そう言って籠の蓋を開くと子猫が顔を出した。こういう時のレンはすごく可愛い。
「その子猫があの男ですか?」
「そうですよ!可愛いでしょ?レンです!よろしくお願いします」
籠から引き上げ、自分の膝の上に乗せ総長2人に向かって片手を持ち上げ腹話術的に挨拶させてみる。
総長2人は顔を見合わせ複雑な顔をしており、子猫のレンは愛想も無くミュナにされるがままである。
「レン戻ってあげて」
そう言うと人の姿に戻ったレンに支え切れず倒れ込んだミュナに覆い被さるように現れた。首に顔を埋めレンの唇が首筋を這う。
『見られるのが好きなのか?』
「ひぃぃっっ!!違いますっっっっ!!!降りて降りて!!」
「若造達には目の毒ではないかのぅ・・・」
「え、えぇ。困りましたね・・・。騎士の選考やり直すべきか・・・」
「防衛の要の我らがこれ位の事に無関心にならねば国に災いを呼ぶ。試練だと思って耐えさせるしかあるまい」
「そうですね・・・」
騎士団総長の深いため息が室内に響いた。
『ん?奴等はなんと言っている?』
「・・・女性の色仕掛けに騙されない様に私達のいちゃいちゃを団員さん達に耐えさせろ的な話・・・かな」
『ふむ、色仕掛けに耐性をつけるのは国を守るのに大事な事であるな。よし我が人肌脱いでやろう。そうだな取り敢えず外にいるミュナの護衛を呼べ』
「あの、レンが外にいる護衛のヒューヴァーさんを呼んでいるんですけど・・・」
「分かった・・・何をするつもりか分かるか?」
「さっぱりです。ただ人肌脱ぐと」
なんか嫌な予感しかしないけれど、ヒューヴァーさんは総長に呼ばれて室内に入って来た。レンはミュナを後ろから抱きしめた形で座った。
「お呼びでしょうか!!」
『我の前に膝をつけ』
「えっと、レンの前に膝を突いてもらって良いですか?」
訝しげな表情を一瞬したものの膝を突いた。レンがヒューヴァーの目の前に手を翳す。3人ともヒューヴァーが何をされるか分からないので息を呑んだ。
「ーーなぁっっっ!!!???」
顔にほとんど感情を出さなかったヒューヴァーは顔を真っ赤にさせ目を彷徨わせる。
『しっかり護衛対象を見ぬか?』
「えっと、護衛対象をしっかり見なさいと」
ヒューヴァーは唾を飲み込んで、意を決した様にミュナをじっと見つめる。最初は視点が定まらずミュナの顔もまともに見られなかったが、少し顔色が落ち着いて来た時点でレンは指を鳴らした。
「ヒューヴァー何が起きた?」
「そ、その・・・」
「早く報告しないか」
「そ、その指を鳴らすまでゆな様の服が・・・消えていました」
「ふぁぁぁーーーーーーーーっっっっ!?!?!?」
「なっ!?それは本当か!?」
「・・・はい。ゆな様お身体を見てしまい申し訳ございません!!」
衝撃の事実に全身茹で蛸状態のミュナは魂が抜けた様に反応しなかった。
『この者ならばミュナの護衛も出来るであろう』
ミュナが会話もままならない状態になってしまった為に仮眠室にミュナを休ませ、契約などの説明は午後からとなった。仮眠室でだんだん正気を取り戻したミュナが枕でレンをタコ殴りにしたのは言うまでもない。
午後総長の執務室に戻ったけれど、護衛の任に就いている騎士のヒューヴァーの顔を見ることができなかった。これも全てレンの所為だと恨む事しかできない。
仮眠室で恨み節でレンに言うと『大丈夫だ。ミュナの身体は美しいからアイツも得したと思って休憩中にどこかで抜いておるだろう』とか、わけ分からん事抜かして来た。だんだん私の正常だと思っているのが異常なのかと分からなくなる。早いうちに相談できる相手を探さないと、レンの良い様にされてしまう気がする・・・。
総長執務室に戻った私と総長2人は少しの間微妙な空気に支配される。原因は勿論レンが起こした全裸事件だ。もう初日だけど仕事辞めたい、引き篭もりたい、一刻もこの場所から逃げたいと思いつつも逃げて原因作ったレンのお世話になるのも癪なのでなんとか耐えた。
「ーーコホン!!・・・えーー、これから魔術団団員1名と騎士団団員1名の計2名がゆな嬢の警護に当たります。何か不服があった場合はその者達か総長である我らに言ってください」
「この魔術団での仕事の事であるのだが、ゆな嬢はその・・・レン殿の通訳以外も出来るのかな?」
「あ、はい。大体は問題ないんじゃないのかと思います」
「自分で分からないというのは魔法なのか?」
「それもよく分かんないです」
「分からぬとは・・・まるで伝承の様ではないか・・・」
「伝承ですか?」
「うむ、この世界には伝承に残っている偉大な魔法使いがいるのだよ。その魔法使いはレン殿の使う時空魔法や無属性魔法が使えたのだが、文献によるとその魔法使いは全ての言語を理解し魔物とも会話が出来たと記されておるのだ。もしそれが魔法ならば文献の理解が進むと思わないかね」
その魔法使いは異世界から来た人なんじゃないのかなぁ?と思っていると、隣に座っていたレンが話しかけて来た。
『そういえばミュナ、お前も異世界の者だと此奴らに説明しておったか?』
「あ・・・してないや」
この世界に来てレン以外に自分が異世界人だと告げていない事を思い出した。
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