四話

 吾輩はむっちゃんと申す。


 とりあえず、ワラスボの群れから脱出した吾輩は新たな仲間を探して旅を続けていた。


 さてさて、いったいどうすれば、佐賀の魅力があがるというのだろうか。


 いいところはたくさんある。


 他の県になにが劣るというのか。

 我輩にはこれほど魅力的な土地が魅力がないというのはめっぽう納得できぬことであった。


 ああ、


 どうすべきであろうか。


 我輩の頭ではまったく思い付かぬ。


 だから我輩は仲間を募るのじゃ。



 なになに



 佐賀には葉隠の魂というものがあるではないか。


 ここは武士道に徹して佐賀を救うべきときではないか。


 ん?



 武士道?


 武士道とはなんぞや?


 葉隠とはなんぞや?



 馴染みのある言葉でありながら、吾輩にはよくわからん言葉であった。


 とにかく武士として記した書物のことらしい。


「なんばいいよっとねえ。もう武士の世はとっくの昔に去ったじゃなかかあ?」


 どうやら、吾輩の独り言を耳にしたのだろう。


 空から一羽の鳥が飛び降りてきた。


 顔はカラスのような顔立ちで身体の上の部分は黒く。下の部分は白い生き物だ。


「カチ子ちゃんじゃなかか」


 それはカチガラスのカチ子ちゃんだった。


「どがんしたね。武士道の話するととはむっちやんらしくなかやんか」


 カチ子は羽根をばたつかせながら問いかける。


「武士道は気にせんでよか。実は」


 吾輩はカチ子に事の成り行きを説明した。



「ほほお。それはよかねえ。わいも賛成たい。どうも佐賀が魅力度ランキング最下位というのは納得いかん!。でも、わっちゃんも協力はしてくれるとやろう? そんなら、必ず魅力度アップするたい。あがんもよそわしかもんはおらんもんなあ。ハハハハハ」



 そういいながら、カチ子は豪快に笑う。


 そんなに気持ち悪いものなんていっちゃいけないだろう。もしも、わっちゃんが聞いたら怒るに決まっていると、吾輩は嫌な予感がした。


「なんだとおおおおおお。おいのどこがエイリアンごとしとってやああああああ」



 その予感は的中。



 いったい、どんな地獄耳しているのか。いやいや。なぜエイリアンと変換してしまうのかはわからないが、ものすごい勢いでわっちゃんがやってくるではないか。


 さすがの皮肉屋のカチ子ちゃんもぎょっとする。


 ただでさえ怖い顔がさらに恐ろしい顔になっているのだ。


「カチ子おおおお。おいの悪口いうたろう」


「なにをいいよるね、わいは事実を言っただけたい。ほんによそわしか顔しとるねええ。おほほ」


「なんばいいよるね。おいはワラスボ一の美人たい。おいによってくる雄はどっさいおるとよおおお」


「そうだ。そうだ。わっちゃんの悪口いうなあああ」


 いつの間にか、わっちゃんの仲間たちもやってきていた。


 しかもものすごい形相でカチ子ちゃんを睨みつけている。


 吾輩は恐怖で凍り付きそうだというのに、カチ子ちゃんは堂々としているではないか。なんと肝の据わった鳥だろうか。


「ほほほほ。わいのほうががっばいモテるとよ」


 その言葉に呼応したかのように大量の鳥たちが空から舞い降りてきた。そのほとんどというよりもすべてが黒い毛色に身を包んだ鳥。カラスだった。


 カラスは一羽だとあまり思わないが。数百はいそうな烏の群れには血の気が引く。


「ひいいいいい」


 吾輩は思わず悲鳴を上げた。


 そんな吾輩の心情を無視して、カチガラスのカチ子ちゃんの率いる烏集団とワラスボのわっちゃんの率いるワラスボ集団が火花を散らした。



 怖い


 怖い

   

   怖い



     怖いんですけどおおおおおおおお



 ホラーだ!


 ホラーたい!



 ある意味魅力度アップするかもしれんけど


 ただのホラーな県になるだけたい!


 ただの怖いもの好きの集まるだけでいっちょん魅力度の向上につながらんとじゃなかか!?



 我輩はわっちゃんとカチ子をどうにか止めないといけないと思った。されど、どうすればいいのかわからずにオロオロするばかりだ。



 とにかく誰か止めてくれええええええ!






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