月のウサギがおちた夜


よい子に見上げられ餅をつきゃいい

なんて気楽なこの世の暮らし

望みと言えばこの餅を

一度は食べてみたいくらい


まん丸お月様

よい子を見下ろす夜のこと

ウサギは心が跳ねたのさ

愛しさを滲ませた

あの人の視線に気がついて

ウサギは思わず跳ねたのさ

小さな胸を熱くした

自分自身に驚いて


餅をついてりゃ良かったのに


愛されて愛してて

月のウサギは踊りだす

あの人に見えるよう

その想いが伝わるよう



糸のようなお月様

よい子も眠った夜のこと

ウサギは細い隙間から

「消えないで」と祈るよな

澄んだ両目を見つめ返す

ウサギは細い隙間から

「愛してる」と確かな

囁きに微笑みを返す


餅だけ望めばよかったのに


どれだけ止められても

月のウサギは堕ちてった

「あの人を愛してる」

「あの人に愛されている」



愛しても愛しても

届かぬ想いはあれど

愛され続けても

応えれぬ想いはあれど


愛されて愛されて


愛してて愛してて…



愛されて愛してて

月のウサギは落ちてった

あの人の腕の中

しあわせそうに餅を



月のウサギがおちた夜

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