第四章 リワインド

第39話 あれから、世界中が変わり始めた

202X年 7月


 私とシンが、異星人との最後の交流をしてから、約1ヶ月経った。

 

 あれから、エイリアン達との遭遇、新エネルギー貯蔵システムであるH60機関『バッキー・システム』のロボットの活躍、それに秘密裏に開発されていたバイオモデムによる遺伝子改造とクローン技術が明らかになったって言う、三つの大事件が同時に起こっちゃったから、世界中の人達は、それこそ世界がひっくり返った様な大騒ぎ。

 

 ただでさえ、『エイリアンが地球上の生命の進化をコントロールしていた』って事実は、そりゃあ世界中の人々にとってショッキングな話題だったから、カク教授や我問さん、それに私は、世界中の報道機関からのインタビューの申し込みで大忙し。

 

 でも、その配信をチェックしてみたら、結局は彼らにとって都合の良い所だけ使われてて、本当に私達が伝えたかった事は全部カットされちゃってたし、ヘンな新興宗教団体があちこちに出来て怪しげな商売に利用しようとしたり。その有様にあきれ果てた私達は、それ以来、よっぽど信頼出来るジャーナリストの取材申し込み以外は、ぜぇ~んぶ断る事にしちゃった。

 

 それに、あの『ハイドロフラーレン爆弾』が引き起こした大震災と、震災の復興に貢献したロボット達の活躍以来、どれだけ『H60 = ハイドロフラーレン』が革命的なエネルギー貯蔵システムであるかが世界中の国々に知れ渡って、国際連合で世界各国がその利権について、『今までの石油みたいな化石エネルギーを、どうやったらH60システム = ”バッキー・システム ”に変えられるか?』って流れになり、国連の決議で、 ”国連代替エネルギー統括機関 = U.N.A.E.M.”

( ”United Nations Alternative Energy Management organization ” )

を創立し、国連加盟国がそれぞれの分担や役割について話し合いをする事になった。

 

 その『国連会議』には、我問さんやター坊伯父さん、それに私も何回か出席したけど、なんだか誰だって、フツーに考えれば当たり前の事を、いちいち『第何十何回 ナントカのナニナニに関する会議』って大袈裟なお題目を付けては、日本の松羽目が準備していたクーデター計画や、ネオ・ナチス総統ゲッヘラーによって起こされた日本の大震災の賠償問題を巡っては、日本の保谷総理大臣と、ドイツのジンネマン首相の責任の押し付け合いなっちゃって、しかもそこに、アメリカみたいな石油エネルギーで大儲けしていた大国が『バッキー・システムの利権を我が者にしちゃおう』ってミエミエの姿勢でしゃしゃり出て来て、話し合いはいつもこんがらがったまま。会議はいつでも「では、結論は次回の会談で」、みたいに先送り。

 

 なんだか、オトナの世界ってメンドいのよね。ったく、付き合ってらんないわ。

 

 でも、いくつかの良い出会いもあった。

 

 『ユーネム』の創立を進めている、国連の事務総長であるベネズエラ代表、『イヴォンヌ・アランサス』って女性はとっても知的で温厚な人で、私や我問さん、キラ、ジェイド、ター坊伯父さんと直接何回も会って、建設的な話し合いが出来たし、

 

「これからも、貴方達の現場の判断を第一優先にします」って、約束してくれた。

 

 ベネズエラって国は、小さい割には石油産出量が多い国だから、これまで他の石油大国の利権に翻弄されて来たんだって。

 

 だから、「水と太陽エネルギーの恩恵を受けている我が国は、H60の可能性に国運を掛けてるみる覚悟です。そして、石油と言う化石エネルギーの呪縛から抜け出て、真の独立を果たしたい」って、アランサスさんは本気で言ってたし、な~んか彼女とは上手くやって行けそうな気がする。

 

 そして、主に太陽エネルギーが豊富な赤道近くにある南国の各地域で、『シー・タワー』と呼ばれる太陽光、風力、波力をハイブリッドで活用して、H60を生産するプラントの建設が急ピッチで進み始め、私達の日本領域ではその『シータワー』を、沖縄県の離島にある八重山諸島の中心都市、石垣市に委託して、日本最南端の島である『波照間島』を拠点に建造する事が決まった。

 

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