第37話 ジーン・ファイト

 そこに、光の輪から2体のロボットが素粒子から合成される様に現れた。

 

「奈々さん、このジーンマトン2体を制する事が出来れば、それはすなわち貴方達の生命力の強さを証明出来るのです。さあ、奈々さん、準備は宜しいですか?」

 

 ジーンマトンは両手と両肩に装備したバッキーキャノンで、私の乗ったツヴァイに攻撃を仕掛けて来る。


 攻撃を受けたその瞬間、私の心の中に「もう一人のワタシ」が現れ、2つの人格がツヴァイとシンクロすると、ツヴァイの弾道予測システムで被弾回避行動を取るが、さすがに同時に8本のビームを避ける事は出来ない。


 一撃目で左足を撃ち抜かれて失う、ワタシのツヴァイ。

 

「ウゥッ!」

 

 次から次へとツヴァイを襲うビーム。

 

 背中と右足のバーニアをフル稼働させて、2体のジーン・マトンの同時攻撃を一寸の差でかわすワタシとツヴァイ。

 

 ツヴァイのバッキーキャノンとバッキーブラスターでワタシも反撃するが、それを難なく避けてしまうジーンマトン達。

 

「早すぎる! お願い、当たって!!」

 

 むなしく宙を切るツヴァイのバッキーキャノン。


 ワタシとツヴァイの遅さをあざ笑うかの様に、ジーンマトン達はワタシのツヴァイの隙をついて接近すると、ハイドロソードで一つ、また一つと手傷を負わせる。

 

 その時、ワタシのセミ・ロングのヘアスタイルが逆立ち、それをアンテナにして電磁パルスを波紋状に放射すると、一体のジーンマトンの動きが鈍った。

 

 その一瞬を見逃さず、その一体に肉弾戦を仕掛けるワタシ。

 

 ジーンマトンのハイドロソードと、ツヴァイのハイドロソードが接触し、目を覆わんばかりの閃光がほとばしる。

 

 両者の力のつば競り合いになって2体の動きが止まったその瞬間、もう一機のジーンマトンがハイドロソードでツヴァイの背中に襲いかかる。

 

 その動きを感じ取ったワタシとツヴァイは、自らのバッキーブラスターに付いたハイドロソードを手放すと、向かい合っていたジーンマトンの右腕を掴み、ボディを反転させると掴んだ敵のハイドロソードごと後のジーンマトンに振りかざす。

 

 ジーンマトンはその動きを読み切れず、左肩からバックパックのバッキーキャノンごと切り裂かれる。


 3体のマシンは弾かれる様に離れると、またバッキーキャノンでの撃ち合いになる。


 ワタシは、こまめにツヴァイの姿勢制御のバーニアを吹かしながら、手傷を負ったジーンマトンに狙いを定める。

 

 ワタシは、モニターに映し出される弾道予測照準システム(E.B.A.S. )を無視する様に目蓋を閉ざし、心の中でジーンマトンの動きを直感的に予測して、照準をずらしながらバッキーキャノンを発砲する。

 

 ワタシの放ったビームが、ジーンマトンの胴体に命中し、激しい爆発を起こして宇宙空間にキリ揉み回転しながら四散する。

 

 だが、照準の為に一瞬止まったツヴァイの姿を、もう一体のジーンマトンが見逃さなかった。

 

 再びワタシとツヴァイを襲う4本のビーム。ツヴァイの残りの手足と、バックパックに付いたバッキーキャノンが破壊されてしまう。

 

「しまった!!」

 

 ワタシは、ツヴァイの武器を全て失われた!

 

 その時!


 一筋のビームがジーンマトンに襲いかかり、左肩のバッキーキャノンを破壊する。


「奈々!!」

 

 シンの乗ったエグゼター3号機、デュレイが成層圏に現れる。

 

 コックピットには、手足の他に頭や背中までチューブで繋がれたシンの姿が。

 

「シン!! なんて姿を!」

 

「我問さんに頼んで、オレの神経中枢をデュレイのO.S.を直接繋いで性能をバージョン・アップしたんだ。お前の為なら、こんな事へっちゃらさ」

 

「そんな! シン!!」

 

「いいから、ここは俺に任せろ!」

 

 バッキーキャノンを一つ失いつつ、残りの3門のバッキーキャノンでデュレイに反撃して来るジーンマトン。

 

 シンのデュレイは搭載されたO.S.の弾道予測回避行動 ( C.B.P.M. Counter Ballistic Predict Maneuver )プログラムでそれを避けようとするが機動性で及ばず、ビームを寸差でくらってしまう。

 

「クソっ! 創造主だかなんだか知らないが、エイリアンなんかにオレ達の未来を左右されてたまるかよっ!俺たちの未来は、俺たちが切り開くんだ!!」


「シン! 私と心を合わせて!!」

 

「えっ?」

 

 その瞬間、私の心がシンのデュレイの中に入って行く。

 

 モニターに表示されるジーンマトンO.S.の動きの予測をさらに先取りするかの様に、ワタシのイメージがシンに伝わる。

 

「見えるよ、奈々! 食らえっ!!」

 

 デュレイのバッキーキャノンが火を吹き、ジーンマトンの片足を吹き飛ばす。

 

 ダメージを受けつつも、バックパックで加速して接近して来るジーンマトン。

 

 バッキーキャノンを乱射するデュレイと、それをかわすジーンマトン。


「シン! 相手は片足を失って動きが鈍ってる! 良く狙えば必ず当たる!!」

 

「ダメだ! 早すぎるよ!」

 

「焦らないで! 私の心を読んで!!」

 

 デュレイのコックピットのシンと、ワタシの心が再びクロスオーバーし、シンクロナイズする。

 

「よし! これでどうだっ!!」

 

 デュレイの放ったビームが、ジーンマトンの背中と片腕のバッキーキャノンを次々に破壊する。

 

 だが、残った片腕についたハイドロソードで、デュレイに襲いかかるジーンマトン。

 

 それをデュレイのハイドロソードで受け止めるシン。

 

 パワーで上回るジーンマトンのハイドロソードが、じわりじわりとデュレイのハイドロソードとバッキーブラスターを破壊して行く。

 

 その時!

 

「シン!!」

 

 ワタシは、胴体だけになったツヴァイに残された姿勢制御装置を駆使して、ジーンマトンに体当たりする。

 

 弾き飛ばされるツヴァイとジーンマトン。

 

 宇宙空間に放り出された、敵のジーンマトンを見て、ワタシは叫ぶ!

 

「シン! 今よ!!」

 

 バーニアを吹かして体勢を立て直すジーンマトンのモニターに、シンのデュレイのバッキーキャノンが照準を合わせる様子が写し出される。

 

「トドメだ!!」

 

 バッキーキャノンが咆哮し、ジーンマトンの胴体を貫いて一撃で破壊するシン。

 

 ワタシのツヴァイは、体当たりの衝撃で不規則に回転しながら遠ざかって行く。

 

「姿勢制御が効かない!」

 

「奈々! 今行く!! 待ってろ!!」

 

 エンジンを全開にしてツヴァイを追うデュレイ。

 

 ツヴァイにランデブーすると、ツヴァイの回転を止めて両腕に抱きかかえるデュレイ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

脚注:ジーンマトンの設定デザイン。

https://kakuyomu.jp/users/may_2018/news/16816927860066434162

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