第34話 アウト・ブレイク

 一方、救護センターで、被災した怪我人や患者を治療しているキラとジェイド。

 

「ふう、いくら治療してもキリがないわね。トリアージが混乱しているのか、正確な診断が出来ていない。軽い下痢症状の人が数時間後に死亡した例もあるわ」

 

「医者の数が圧倒的に足りないんだ。それに浸水した地域から感染病が発生しているらしい。キラ、抗生物質は足りているか?」

 

「今日中の分くらいは手持ちにあるけど、投与しても効かない患者が増えている。

これ、どう言う事だと思う、ジェイド?」

 

「抗生物質が効かない? 分からん、センターにいる我問に連絡して、状況を報告しよう」


 身に付けたインカムから、我問に連絡するジェイド。我問が応答する。

 

「ああ、ジェイドさん。そちらの状況はどうですか?」

 

「それがどうも良く無い。浸水して衛生状態の悪くなった地帯から感染病が蔓延し始めているのだが、どうやらこれまでの抗生物質が効かないらしいんだ」

 

「抗生物質が効かない? それはもしかしたら未知の新種のウィルスかも知れない・・・」

 

「我問、今そっちに病原体のサンプルを持って行くから、大至急解析出来るか?」


「やってみます!」

 

「キラ。俺は司令センターの我問に会って来る。ここを頼んだぞ!」

 

「分かった。気を付けてね!」



研究所のフォトンスキャナで、ジェイドの持って来た病原体のDNA組成を調べる我問。モニターに病原菌のDNAが表示される。


「これは! まさかこんな事があるとは考えられない。待てよ!」

 

「我問、どうした?」

 

「この病原体なのですが、感染経路と方法を特定出来ますか?」

 

「感染のスピードはそれ程早く無いので、恐らく空気感染では無く、接触感染だろう。患者の住所や職場のデータがあるから、出来ると思うが、何故だ?」

 

「この研究所のフォトンスキャナを使っても全てのDNA組成を調べるには時間がかかるのですが、現在分かっている事だけでもつじつまが合わないんです」

 

「どう言う事だ?」

 

「この抗生物質が効かない病原体のDNAパターンには、ある特定部位に ” 自然界には含まれない組み合わせ ” が入っているんです」

 

「自然界には含まれない組み合わせ?」

 

「松羽目が越路博士と共同で開発した、”インプラント・コード” ですよ!」

 

「 インプラント・コード ・・・。確かそのコードは、ウィルスの形態で移植されていたんだったな? そのウィルスの密閉が破れて拡散しているのではないか?」

 

「いえ・・・、仮にそうだとしても・・・、インプラント・ウィルスは、個体用に特化されているので、他の個体には影響がでる筈が無いのです」

 

「それでは、一体・・・?」

 

「恐らくウィルス自身が自己再生の過程で突然変異を起しているか・・・、でも自然界でこれほど急激に進化するウィルス等見た事がありません」

 

「我問、コードを解明してワクチンを作れないか?」

 

「そうですね。早急にウィルス無毒化のDNAプログラムを作って、万能細胞でワクチンを培養しましょう」

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