第14話 対面



 部屋の奥の合金製の扉が開くと、そこにはまだあどけない私の妹、ヤエが立っている。


「ヤエ!?」

 

「ハッハッハ、驚いたかね? そうとも。君の妹のヤエちゃんだよ。さすがに血筋とでも言うのかねぇ。君をも凌ぐ能力を発揮してくれたよ」


「お姉ちゃん・・・!? 奈々お姉ちゃん!!」


 ヤエは私を見つけると、嬉しそうに微笑みながら近づいて来る。


「ヤエ!!、来ないで!!」


 そこに松羽目が、低く冷酷な声で命令を下す。


「ヤエ。奈々を、コ・ロ・セ!!」


 その声と共にヤエの目の色が変わり、小型のダガーナイフを抜いて私に襲いかかって来る。それを必死で避けながら、ヤエに叫び続ける私。


「やめて! ヤエちゃん!! お姉ちゃんなのよ! 気づいて!!」


 だが私は、ヤエの超人的な素早い動きに、ひとつ、またひとつと傷を受けてしまい、ついにヤエの刃に私の脇腹を突き刺されてしまった!


「ウぅッ!!」


 私は、あまりの激痛に、その場に倒れ込む。


 その姿を冷酷なまなざしで見下ろしているヤエの心に、私は語りかける。


「ヤエ・・・ちゃん・・・。良く聞いて・・・。あなたは本当は良い子なのよ..、 ウッっ!」


 私の口から、血が吹き出しはじめた。私の脇腹の刺し傷は、吐血にかかった時間からして、どうやら胃の近くの小腸まで達しているらしい。それを見たヤエの目の色が、少しづつ正常に戻って行く。


 私は、体内からの出血と胃液の混合物が、気管支に入って私の呼吸を阻害するのを防ぐ為に、わざと口から液体を吐き出しながら、


「ブふっ! それをね・・・、ゲほっ!! あの人がおかしくしちゃっの・・・。分かる? あそこに立っている人・・・」


 ヤエの瞳の色が元に戻る。


「お姉ちゃん!! どうしたの? お姉ちゃん!!」


「ヤエちゃん・・・。 良かった!」


 私は自分の失血と痛みで、少しずつ意識を失われつつあるのを感じながら、ヤエに心で語りかけた。


「ヤエちゃん・・・、これから沢山の国の人達が、訳も無く殺し合いを始めようとしているの。だから! お願いだからそれを止めて!!」


 焦る松羽目は、ヤエに命令を下す。


「どうしたヤエ! はやくとどめを刺さんか!? コ・ロ・セ!!」


 その一言でまたヤエの目の色が変わった。


 「コ・ロ・セ・・・」


 私は、残された力の限りを振り絞って叫ぶ!


「ヤエちゃん!!」


 ヤエは私の腹部に刺さったダガーナイフを抜き、振り向き様にナイフを投げた。


 ダガーナイフは、松羽目の眉間に突き刺さる。


「馬・・・・・・鹿な・・・・・・」


 コンソールパネルに倒れ込む松羽目。その手があるスイッチを押し、デジタルヴォィスが流れ始める。


「緊急自壊装置が作動しました。各員は5分以内に安全な距離まで退去して下さい。緊急自壊装置が・・・.」


 繰り返されるアナウンス。再び我に返るヤエ。


「お姉ちゃん! しっかりして!!」


 私は、おぼろげに意識を取り戻しながら、


「そうね・・・、生きなきゃね。あなたも、私も・・・.」

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