第13話 切り札は最後まで
その時、階下から近衛兵達の足音が。
ワタシは無表情のまま、殺した近衛兵のAR-57の予備弾倉ポウチをタクティカルハーネスごとはぎ取ると、自分の身に付けて、AR-57アサルトカービンを構える。
階段の照明に照らされた複数の近衛兵達の陰を確認したワタシは、とっさに身体を移動させて、倒したの死体の陰に隠れる。
近衛兵達は、階上のワタシの姿を見つけられずに、AR-57アサルトカービンが持つ50発と言う大容量弾薬保持数を利用して、標的も定めずに一斉乱射して来る。
だが、いくらワン・マガジン50発とはいえ、発射速度が毎秒800発以上あるAR-57は、およそ3秒弱でマガジンを空にしてしまう。
ワタシは、それぞれの近衛兵達が弾薬が尽きた瞬間を見計らい、盾にした死体の隙間から、AR-57に装備されていたEO-TECH-EXP-3の星形レティクル(射手にしか見えない照準システム)を利用して、確実に近衛兵達の首の急所を、一撃、また一撃とスナイピング(狙撃)して倒して行く。
近衛兵達の頸動脈から、一人、また一人と鮮血がほとばしる。
最後の一人になった近衛兵が、ワタシの方向に向かって殺傷性フラグメント・グレネードを投げつける。
炸裂したグレネードは、鋭角な金属片と共に四方八方に炸裂する。
ワタシの周りには、穴だらけのボディアーマーを着た近衛兵の死体が何体も転がっている。
独り遺された近衛兵は、ワタシが下に隠れていて不自然に盛り上がった死体を怪しげに思ったのか、ゆっくりと近づいて来て、AR-57の銃口で死体を起そうとしたその瞬間!
ワタシは、奪ったハーネスに付いていた戦闘用ナイフを抜いて左手に持ち、
隠れ蓑にしていた近衛兵の死体の下から、生き残りの近衛兵の防護ブーツのふくらはぎを突き刺す。
「ウッ!!」
ワタシは、盾にしていた近衛兵の死体をナイフと一緒に押しのけると、
右手で奪ったハーネスのホルスターからH&K SOCOM Mk23を抜き、,45ACP弾を敵の顔の正面に突きつける。
近衛兵は驚異的な反射神経でワタシの右手を掴み、狙いを顔から避けようとして逆らい合い、ブルブルと震えるお互いの腕と腕。
その時、ワタシはMk23を半時計方向90度に反転させ、トリガーを引き続けた。
「ドンッ! ドンッ! ドンッ! ドドンッ!」
最初は空を撃っていたワタシのMk23が、,45ACPの反動で、撃つ度に銃口が近衛兵の顔に近づき、ヘルメットとゴーグルのハーネスを破り、ついに近衛兵の眉間を撃ち抜いた。
その場に崩れ落ち、顔が露出す近衛兵。
だが、ワタシがそこに見たのは、もう一人の私自身の顔だった!
次々とヘルメットとゴーグルが外れた近衛兵達は、私と同じ顔をしている。
私の目の色が元に戻り、床に転がっている他の近衛兵の死体を見渡しながら、
「こ、こんな事って・・・、」
そこに松羽目のアナウンスが流れる。
「奈々よ、驚く事は無い。全てを教えてあげるから、ここへ来なさい」
私は、放心状態でH&K MK23 SOCOMを床に落とすと、その言葉に導かれるまま、地下の司令室へと入って行く。
その部屋は、日本家屋とは似つかない最新のデジタル装置で埋め尽くされていて、松羽目が自慢げに解説を始める。
「見たまえ、奈々よ。この地下基地は全国の自衛隊ミサイル防衛システムとリンクされているんだ。なぁに、防衛システムと言っても表向きだけの事。実際には、JAXAが宇宙開発を目的に開発した『イプシロン』の改良型で、大陸間だって攻撃出来る最新形の固形燃料ロケット、『イプシロン-Mk3』が装備されているんだよ。
当然、核弾頭もな。どうだ? これさえあれば、我が新軍事国家は無敵だ。
アァッハッハ!!」
「私」はそんな、どーでも良い攻撃システムなんかに興味は無いし、早速、肝心の質問の核心を突く。
「あれは! あの紫色の近衛兵達は・・・、 どうして私と同じ顔を・・・!?」
松羽目は、私の質問を予見していた様に、
「さっきも言ったろう? キミは私が完成させた最高傑作だとね。折角苦労して作った優秀なデータだ。コピーして多数のクローン兵士達を作らせてもらったよ。だが、どうやらオリジナルデータの持ち主である君には、敵わなかった様だがね」
”私”を勝手にコピーしたですって?
そんな行為は、肖像権、知的所有権・・・、その他のウンたらカンたら以前に、
「日本国憲法」で保護されている筈の『基本的人権』の侵害じゃん!
「そ、そんな・・・、 アナタって人は!!」
松羽目は、ふんぞり返って開き直り、
「自然淘汰だよ、奈々。私は生命誕生以来繰り返されて来た行為の継承者だ。
そしてもはや我々は自然をも超越した存在なのだ」
あ”ー、出ちゃったよ。『人類文明信者』のチョー勘違い妄想発言。
「さあ、今からでも遅くは無い、奈々。私と一緒に新国家を再建しようじゃないか?」
「・・・私は嫌! 命は自然からの大切な贈り物よ? それを弄ぶなんて、許せないっ!!」
「ほお、ではどうする? 私を殺すか? お前の育ての親であるこの私を??」
私はその言葉に躊躇を感じたけど、やっぱコイツだけは許せない。ワタシの目の色は徐々にオレンジ色の攻撃色に変わって行く。
「おぉっと待ちたまえ。その前に紹介させてもらおう。我が組織のナンバー・エイトを・・・」
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