政略結婚した夫の愛人は私の専属メイドだったので離婚しようと思います

7-15 サミュエル皇子の告白

　振り向いた先に立っていたのはサミュエル皇子だった。彼の着ていた服はボロボロで、体中は酷く汚れていた。まさか・・・！とっくに国に帰っていたと思っていたのに・・私はサミュエル皇子迄巻き込んでしまった？！

「サ・・サミュエル皇子？！だ、大丈夫ですかっ？！」

ミラージュの背中から飛び降りて、慌ててサミュエル皇子に駆け寄った。

「レベッカッ！！」

すると何故かグイッと腕を掴まれ、次の瞬間強く抱きしめられていた。

＜　まあっ！！　＞

それを見て驚くミラージュ。いや、それ以上に驚いているのは私の方だった。

「ど、どうしたんですか・・・サミュエル皇子・・・。」

するとサミュエル皇子はますます強く抱きしめてくると言った。

「良かった・・・レベッカ・・・無事だったんだな・・？」

「え？」

「昨夜・・ランス皇子との食事会・・いくら待っても来なかったから・・嫌な予感がした俺は・・一晩中君を探し続けていたんだ。なのに・・見つからなくて・・・森の中で休んでいたら突然激しい地震が起こって、空は真っ黒い雲に覆われて・・だから余計心配になって今ままでずっとレベッカを探し続けていたんだよ・・。」

「そ・・そうだったんですかっ？！」

すると、ようやくサミュエル皇子は落ち着いたのか、私から身体を離すと言った。

「あ・・・ごめん・・。俺の身体・・すごく汚れていたのに・・レベッカの身体迄汚してしまったね？」

申し訳なそうにサミュエル皇子は言う。

「いえ・・それは別に構わないのですが・・・。」

今まで一度も誰かに抱きしめられたことの無かった私の心臓は先ほどからドキドキとうるさい程に鳴っている。私・・どうしてしまったのだろう？

「で、でも・・・とっくに国にお帰りになったと思っていましたよ・・。」

「帰るはずないだろう？！君がいなくなったと言うのに・・・、いや・・それ以前に・・もう俺は国に帰るつもりは無かったんだ・・。」

サミュエル皇子の言葉に驚いた。

「え・・？一体どういうことですか？」

「リーゼロッテが我が国から解放されて、グランダ王国に行くから・・俺も王位を捨ててこの国にやって来たんだ。アレックスがリーゼロッテを自分の傍に置くことは分かっていたからね・・・。だから俺は・・本当は君を攫う為にこの国にやってきたのさ。レベッカの事が気にいってしまったからね。あんな理不尽な目に遭っていても、明るく前向きで・・そのサバサバした性格も・・全て魅力的だったからね。勿論外見もとても可愛らしいし。」

「！」

その言葉に思わず顔が赤くなってしまった。

「だけど・・悪い考えは持てないな。攫うつもりが・・まさかリーゼロッテに攫われるなんて・・。」

「え・・・？な、何故そのことを・・？」

私は首を傾げた。サミュエル皇子がリーゼロッテの企みを知るはずが無いのに。

するとサミュエル皇子は言った。

「いや・・実はさっきね、リーゼロッテが木の枝に引っかかっているのを見つけて、降ろしてくれと彼女に助けを求められたのさ。だからレベッカの事を尋ねたんだ。素直に教えたら助けてやると言ってね。そしたら・・・驚いたよ。リーゼロッテはこう言ったんだ。レベッカを滝ツボに落としたはずなのに、生きて城に戻って来たって。おまけに奇妙な力を使う不気味な女だから絶対に関わっては駄目だと言って来た。全く・・飽きれた女だよ。だから俺は彼女をそのまま木の上に放置してきたのさ。」

「ぷ！」

思わずその時の様子を想像して私は吹き出してしまった。でも・・と言う事はリーゼロッテは無事だったのか。ならきっとあの間抜け親子たちも無事だろう。ふてぶてしさにかけては右に出る者はいないだろうから。

「それで・・・後ろのドラゴンは・・どうしたんだい？」

サミュエル皇子はミラージュを見ると尋ねて来た。まあ・・サミュエル皇子になら正体を明かしても構わないだろう。

「ミラージュ、元の姿に戻ってくれる？」

＜　はい、レベッカ様。　＞

するとミラージュの身体が強く光り輝き、一瞬で人間の姿へと変わった―。