7-13 私の逆鱗に触れた時

 は・・?先ほどからあの国王は一体何を調子の良いことをぬかしているのだろう?

冗談ではない。今ではあの2人は私に取って嫌悪感しか感じられない。ランス皇子はアレックス皇子と血がつながっている時点で罪なのだ。


目の前に立つ能天気国王の言葉に折角静まっていた私の怒りの炎がまたフツフツと少しずつ大きくなってくる。


「レベッカ様・・・あいつら、頭がイカレているとしか思えません。やってしまってもよいですか?」


ミラージュの耳打ちが私を冷静にした。彼女に任せてしまえば、あっという間に事は終わるが、彼らには自分たちの事しか考えていないのは見え見えだ。まずは私の気持ちを伝えておかなければ。


「待って、ミラージュ。とりあえず彼らに私の話を聞いて貰いましょう。あまり事を荒立てたくは無いから。」


そうだ、これ以上こんな間抜けな連中の前で私たちの無駄な力を使いたくはない。


そして私は深呼吸すると口を開いた。


「お言葉ですが・・・国王陛下。実は先ほど確かにランス皇子に求婚はされました。」


「おお!そうかっ?!求婚されたのだなっ?!」


「ですが断りました。」


「な・・何だって・・こ、断っただと・・?何故だっ!」


「何故ですって?その理由を私に尋ねるのですか?いいですよ、ならお話しましょう。理由はとても単純な事ですよ。ランス皇子はあの女たらしで、人でなしのアレックス皇子の兄だからです。あの皇子の兄というだけで、無理ですっ!生理的に受け付けませんっ!」


「せ、生理的に受け付けないとは・・・。」


国王はグラリと大きく身体をよろめかせ、がっくりと膝をついた。え?!膝をつくほどショックを受けたのだろうか?


「陛下っ!しっかりして下さいっ!」


「そうです!気を強く持ってくださいっ!」


わざとらしく国王に駆け付ける大臣その他一同。それすらもまるで彼らは演技をしているようで寒気がする。


「ああ・・・お前たち、大丈夫だ・・案ずるな。」


国王は大臣たちに言いつけると、身なりを正して改めて私の方に向き直る。


「そうか・・そうだったのだな?」


突如、国王はポンと手を打つと言った。


「レベッカ皇女よ・・アレックスも駄目・・ランスも駄目と言う事は・・さてはそなたは・・うんと年の離れた男性が良いのだな?それこそ父親程の」


「は?」


あまりの唐突な言葉に思考が止まる。ミラージュも空いた口が塞がらないのかポカンと口を開けている。


「そうか・・・そなたは確か父親にないがしろにされて育ってきた哀れな皇女と噂で聞いておるぞ?その為だったのか・・・知らず知らずのうちに年上男性にしか興味が持てなくなってしまったのだな・・?」


納得したように頷く国王。あの~私はただの一言も父親程年齢の離れた男性が良い等と話したことはありませんけど・・・?


「よしよし・・よろしい!レベッカ皇女よ。なら私がそなたを娶ってやろう。幸い私の妻はもう10年以上前に亡くなってしまった。それに私には側妃は1人もいない。そなただけを愛でてあげられるぞ?」


そして笑みを浮かべる。その気持ち悪さと言ったら言葉では語りつくせない。


「な、な、何ですってーっ!よ、よくもレベッカ様をそんな目で・・ああ!もう全身に鳥肌が立ってしまったではないですかっ!」


ミラージュが私の隣で絶叫する。

私だってそうだ。危うく気絶する一歩手前で、ショックのあまり全身に蕁麻疹が出てしまった。


「おや・・照れているのかい?レベッカ皇女・・・。大丈夫、恥ずかしがることは無いぞ?年上の包容力で大切にしてあげるからな?その代わり・・これからもそなたの不思議な力でこの国を盛り立てると約束しておくれ?」


あ・・・もう、駄目だ・・・。


プツン!


私の中で理性が完全に切れる音がきこえる。


目の前の間抜け国王の言葉は・・・ついに私の逆鱗に触れてしまった―。


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