6-12 皇子が私を嫌う理由
「2人がかつて恋人同士なら、何故さっさと結婚しなかったのでしょう?」
疑問に思った私はランス皇子に尋ねてみた。
「それがね、2人が出会った頃から、すでにリーゼロッテの家にはキナ臭い噂があったからさ。」
「その噂って・・。」
「ああ・・。実はリーゼロッテは両親をそそのかしてガーランド王国を攻めるように国王に提言してくれと訴えたらしいんだ。」
「・・・は?」
何だろう?私の空耳だろうか・・・?
「あの・・・もう一度仰っていただけないでしょうか・・・?」
「うん、いいよ。リーゼロッテは『ソマリ』という小さな国の侯爵家の娘だったんだけど・・その国王の娘が彼女の母親なんだ。つまりリーゼロッテは国王の孫娘なんだよ。彼女は15歳の時に両親と一緒にガーランド王国に行ったことがあり、その時偶然出会ったサミュエル皇子に恋してしまったそうだ。」
「なるほど・・それで?」
「彼女は両親に将来サミュエル皇子と結婚させてくれとお願いし・・娘に甘い両親はガーランド王国に直接申しいれた。・・けど、答えはノー。哀れなリーゼロッテは15歳で失恋してしまった。」
「そうなんですか?」
まさかリーゼロッテがサミュエル皇子に失恋していたとは・・・。
「それでリーゼロッテはサミュエル皇子を恨み、両親に訴えたんだよ。自分を馬鹿にしたあの国を攻めてくれって。」
「何と、それは随分極端な話ですね・・。」
「そこでリーゼロッテに甘い両親は国王に提言し・・孫娘に甘い国王は彼女の要望を受け入れ・・・挙兵の準備をしていた。そして丁度その頃さ。リーゼロッテとアレックスが知り合ったのは。リーゼロッテの両親は万一の為に彼女をこの国に逃がしたんだよ。彼女はこの城の侍女と言う身分で身を隠していて・・その時にアレックスと恋仲になったのさ。」
「だからランス皇子は詳しい話を知っておられたのですね?」
「ああ、そうさ。だけど・・・ソマリ国が挙兵する前に、ガーランド王国の内通者がいて戦争を仕掛けていることがばれたらしい。」
「そうだったんですか?!でも何故・・・。」
「それはね、リーゼロッテがずっと失恋した事を根に持ち、サミュエル皇子に恨みつらみの手紙を送りつけていたのさ。しまいには内容がエスカレートしてきたらしい。そこで念の為にガーランド王国は内通者をソマリ国に派遣したんだよ。」
「はぁ・・・。」
何ともスケールの大きな話だ。
「それで、実際に挙兵の準備を始めていることが分り、先にガーランド王国が奇襲をかけたのさ。それであっという間に城は包囲され・・・ソマリ国はあっさり降伏したんだよ。でもそのおかげで、互いの国で死傷者はゼロだったらしい。」
「あっけない結末でしたね・・。」
「そうだよ、結局ソマリ国は滅亡し・・・リーゼロッテ一族と国王一族は捕虜としてガーランド王国に捕らえられたんだ。勿論最初にそそのかしたリーゼロッテも例外なく捕らえられたけど・・未成年だし、女性だから害はないだろうとみなされて彼女だけ解放されたんだよ。」
「そうだったんですね・・・だからアレックス皇子はサミュエル皇子の事を目の敵に・・・。」
「そうなんだよ。それで今度はアレックスの話になるんだけど・・リーゼロッテにべた惚れだったアレックスはガーランド王国から彼女が解放されたら絶対に自分の妻にすると言って聞かなかった。だけど、そんな前科のある女性を我が国としては皇子の妻に迎える訳にはいかない。それで色々な国の姫君を探して・・オーランド王国の姫に目を付けたのさ。君の国は鉱石が掘れる事で有名だったからね。だけど勿論アレックスは猛反発したよ。けど王命には逆らえないからね・・。」
「あの・・では結婚にあたり、迎えに来なかったのも結婚式に出てこなかったのも、式を挙げる前に私の方から取り下げにして貰いたかったからなのですか?」
「ああ、勿論だよ。だけど・・・普通の女性ならとっくに泣いて逃げ出すのに君は平然と構えている。アレックスの目論見は見事に失敗してしまったんだ。」
「なるほど・・・。何故アレックス皇子がそこまで私とミラージュに対してあたりが強いか、ようやく分りました。」
私はアレックス皇子とリーゼロッテの様子をじっと伺うと言った―。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます