埋没したる、設定資料集。

夏眼第十三号機

管理世界

 管理者

この世界を解説するうえで『彼』もしくは『彼女』の存在は欠かせないだろう。

あらゆる因果にして、全知全能の創造神。

年端もいかぬ者には過ぎたる力を『彼』持っていたのだ。

 ここでいう『彼』とは、男性の代名詞としての彼では無い。英語でいう『they』『彼ら』における『彼』なのだ。

要するに、管理者を男性として彼と呼んでいるのではなく、ただそこにいる存在として『彼』と呼んでいるのだ。

難しかったら、これからはそう。『彼』と括弧つきで出てきたときには男性を表す代名詞ではないと認識すればよい。

 『彼』の性別はいまだ不明だ。ある者によれば男性の姿をしていたともいうし、ある者によれば美しい少女とも語られる。またある者によっては性別といった生物の概念を超越した尊い存在とも語られるため、管理者を語る際には無性、もしくはどちらでもあるとされる場合が極めて多い。

 その存在が語られている文献の多くは、宇宙にいる神への道を求める神守の一族『人形族』によるものが多いが、これは人形族の最も権威ある文献の一つ『降臨伝説』によるところが多い。かなり長いらしい。彼らは管理者、およびこの世界の生物として正しい行いの末至った各地の神々を信仰しており、神の誕生時にはその守護者を一族から排出することが習わしとされている。

 何故、彼らは先祖の元に降臨し、数々の奇跡の下で発展を助けた管理者を信仰するに飽き足らず、世界各地の神を信仰し、誕生を祝福するのか。

その真相には管理者の、管理世界を作った『目的』が大きく影響している。

 『彼』の目的は『生物の限界を超えた存在を生み出す事』にある。

この世界の生物にはそれぞれ『生物レベル』と管理者が呼ぶ数値が存在する。

魂の奥深くに刻み込まれたその『数値』は生物の潜在的な『強さ』に結びつくとされる。即ちレベル1の生物は、どう頑張ってもレベル2の生物には勝てないという訳だ。これは昨今のゲームにも備わっているシステムであるが、ゲームと違い、管理世界において1レベルの違いは相当な絶壁にあたる。

管理世界のほとんどの生物はレベル1しかないそうだ。しかし稀に、魂を昇華させ、生物としてのレベルを一つ上げた存在が生まれることもあるそうだ。レベルの壁は、分厚い。それを乗り越えた者には、管理者からのささやかな贈り物として管理世界の『権限』が一つ、与えられるそうだ。

 権限とは例えば『対象者の生物レベルを自由に操作する』というように、システムに干渉し、あらゆる事象を巻き起こす。その様はまさに神の所業。尚、例に挙げた権限はかなり高いレベルの権限だそうだ。


生物として限界を超えた存在。


そのような者を求める管理者は、一体何を考えているのだろうか。

2022年4月8日現在、いまだ管理世界はシュミレートをやめない。

『彼』の目的も未だ達せられていない。


人形族

 知的生命体第12号。

現存する知的生物では最古の種族とされている。

とある辺境の惑星にて、生活を営んでいる。

管理世界に存在する約16兆種の知的生命体の中で、最も世界の真実に到達した一族でもある。

 太古の時代、とある事情により降臨した『管理者』とその目的の産物たる神々を信仰する。


 ここでいう『神』とは、生物レベル2に到達した知的・非知的生命体を指す。

この世の大半の存在は太刀打ちできない、まさに至高の領域に至った者たち。

その努力と修行の成果をたたえるかの様に、管理世界における『権限』とテリトリーである『神域』が付与される。

人形族の教義によれば、レベル2以上の者は皆『神』と位置付けられるそうだが、レベル2の壁を超えたものは、未だ『例外の1件』しか存在しない。


十二の管理代行者

 管理者が初期段階で作り上げた12人の神々。

それぞれが初期に権限を与えたということと、管理代行機関として機能させるという管理者の思惑により、この12柱には相当高いレベルの権限が与えられている。

信名

『破壊者』

『生命者』

『時間者』

『空間者』

『虚無者』

『赤き者』

『光源者』

『夢想者』

『宇宙者』

『現象者』

『蒼き者』

『統一者』


例外の1件について

 とある十二代行者の2柱による戦いが生み出した例外中の例外。

事件はそう『破壊者』による地球人類大虐殺から幕を開ける。

『破壊者』が地球にて暴走。その余波によって地球人類はほぼ死滅した。

暴走の過程で『破壊者』は地球の神に相当する存在である『生命者』の神域へ侵入を始めた。

結果、生命者は死亡。

暴走の末に『破壊者』は自らのコピーを生み出し始めた。

そのコピーは主に太陽系周域において活動していたが、ついに逃げおおせた知的生命体達の生活圏へ侵入。知的生命体群は自らのテリトリーを守るため、人型覚醒兵器『ガーディアン』の建造計画に着手し始めた。

 例外となるのはそのガーディアンのパイロットを務める『金剛寺龍』である。

彼が乗り込むのは次世代型の雛型、ガーディアン1号機である。

ガーディアンはそのシステムの特異性上、個体別に『意思』を持つことが確認されている。その正体は『生まれ変わった魂』であった。

新1号機にも例外なく魂が宿っていたが、問題はその正体だった。

その正体は、地球人類大虐殺で命を落とした十二代行者「生命者」の魂だった。

 紆余曲折を経て何とか『破壊者』は倒されるのだが、その戦いの最中『生命者」とのつながりにより、金剛寺龍はレベル3へと覚醒するに至ってしまった。

その権限は不透明で、少なくとも現存する神々の権限は行使できてしまうという力に金剛寺は当初怯えさえしていた。

しかし、未来——パラレルワールドの自分との邂逅を果たすことで、力に向き合うことを決意。その後は人形族の里へと旅路を進めている。

彼の権限は、未だ明らかになっていない。ただ分かることは、現状、彼を超える権限を持った神々が存在しないという事だけだ。

レベル2の神々の権限であれば、まるで赤子が乳を吸うように行使できる。


多重平行シュミレート

管理世界とは、ある種の実験世界でもあるため、そのシュミレートは同時期に幾つも多重的に行われている。

所謂平行世界とは、多重実行による誤差により生じるものであり、その影響は世界間によっても異なる。


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