第9話 運命の日
牢屋に入れられた私の前に、ドラインとピネスが来た。
「人払いをした」と言った彼らは、最初は私を案じるよう言葉をかけてきた。
そして、脱獄するようにそそのかしてきた。
けれど、そうはいかない。
「もう演技はやめたら? 二人とも。私を嵌めようとしたんでしょう? とっくにばれているのよ」
私が冷めた視線で見つめると、彼等はあっさりと手のひらを返してきた。
「やれやれ、フレンダにしては、見破るのが早いな。そうだ。全部お前の言う通りだ。お前を利用して毒薬を渡してやったんだよ」
「いつから気付いていたの? フレンダ。まさか最初からなんて言わないわよね」
私は「貴方達には理解できないでしょうけれど、最初からよ」と言った。
「変なフレンダ。でも、だったらどうするんだ? 牢屋に入れられたお前が訴えたって、誰も聞いてはくれないぞ」
「無駄なあがきはよして、絶望した顔をもっと見せてよ。いい気味だわ」
絶望した顔をみせるのは、そちらの方だ。
彼らは、今自分で自分の首をしめた。
それが、致命的な間違いだという事は、ほらもう、すぐ分かる。
牢屋の中に騎士達がなだれ込んできた。
そして、取り押さえられた彼らは牢獄に入れられ、私は牢獄から出された。
牢屋の鍵が閉められた時、呆然としていた彼らは気が付いたようだ。
自分達がはめられたという事に。
私はそんな彼らに言ってやる。
「貴方達が殺そうとした騎士は生きているわ。残念だったわね。私の代わりにそこでみじめな思いをしててね」
「なっ、なぜだ。どうしてこんな事になる!」
「私達の準備は完ぺきだったはずよ。なのになんで!」
答えてあげる義理はない。
こんな大勢の人間がいる仲で、力の事を話したら、要らぬ騒動に巻き込まれてしまうかもしれないのだから。
だから私はそれだけを言った。
奪うという意味がこめられた文字。ドレインからもじった名前の男には「騎士になれなくて、しかも名誉も奪われるなんて残念でしたわね」と。
幸福という意味がこめられた文字。ハピネスからもじった名前の女には「友達の幸せが私の幸せ? 良かったわね、私が今とっても幸せだから、そんな所にいる貴方も幸せよね」と。
そして、友達という意味がこめられた文字。フレンドからもじった名前の、自分には「大切な友達? ばっかじゃないの。友達なんてただ利用するための道具だったじゃない」
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