第3節「試験と狂気」2

まえがき

誰が何と言おうと純愛回です。ヒロインは登場してないけど。


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 休日なので今日も訓練場へ。今日は何をしていこうか、そんな事を考えて向かっていたら声をかけられた。


「おっ、サロス!おはよう」


「アダマスか、おはよう」


「休みの日に会うのは初めてだな。今日なんか予定とかあるの?」


「もちろん訓練場へ行こうと思って。」


「うわっ、真面目だなー。素直に感心するよ。俺はちょっと買いたいものがあったから買い物に来たんだ。ちなみに休日は訓練場以外だったらどこへ行くとか何をしてるとかある?」


「ん?だから休みの日は訓練場で魔法の鍛錬だよ?」


「あーそうじゃなくて、基本は訓練場へ来ているんだな。でもそれ以外でって話。冒険者登録してからまあまあ休みの日あっただろ?冒険者関係以外ではあまり話してなかったから、ただの興味だよ。」


 試験までの期間中は、四人で話し合って週四日活動、週三日休むというサイクルになっていた。どうせFランクの間はお小遣い程度しか稼ぐことができないので、あまり詰めすぎても良くないという判断だった。アダマスの言うまあまあ休みの日があったとはそのことだ。客観的に見て休みは多かったと思う。


「うん。だからずっと訓練場にこもってるんだって。」


「…ずっと?なんか他に出かけたりとかはしないわけ?」


 少し話が噛み合ってない気がする。


「そりゃあフィスィに誘われたら行くけどそうじゃなければ行かない。ほら、俺は万能魔道士だし、人一倍頑張らなきゃいけないから。」


 フィスィに関係のないことで休んでられるはずないだろ?そんな当たり前のこと言わなきゃならないのだろうか。


「いやいや、え、本当にずっとなのか?」


「少なくともここに来てからはサボったことはない。」


「そんなにしていたら体が壊れないか?」


「フィスィのためなら大丈夫に決まってるよ。」


「……えーと、そうだな、今日一緒に出かけないか?」


「訓練場へ行くって言ったよね。なんか緊急の用事?」


「そういうことではないけど。」


「フィスィは来ないよね?それなら行かない。あまり時間を無駄にしてられないし忙しいから。」


「あーそうか、確かにそう言うよな。そのだな…あっ、うん、ほら、せっかく試験に受かったんだからその記念にディプラに何か買ってあげようと思ってさ。だからサロスもフィスィのために何か買ってあげたらいいと思うんだ。」


「フィスィの、ため?」


「そう!そうなんだよ。だからフィスィと一緒に行くのはおかしいよな?やっぱりこういうのはサプライズじゃないと!」


「確かに。」


「な?これは今日じゃないといけないよな?だからさ、今日!行こう!」


「うーん、でも…」


「フィスィのことが好きなんだよな?もちろん彼女のために何かしてあげたいと思ってるんだよな?」


「それはもちろん。当たり前だろ。」


「なら行くしかないよな?」


「…わかったよ。」


「おう、おう!良かった。本当によかった…」


 何を大げさな。そんなに俺に買い物に付いてきて欲しかったのかな?でも元々一人で行く予定だったようだし急な態度の変化は何なのだろうか。まあいい、彼女のためならばどうってことないさ。






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「買い物するんじゃないの?早めに終わったらそれから訓練場に戻ろうと思ってるんだけど。」


「ばっか野郎、人にプレゼントをするときはその人のことを考えて選ばないといけないんだ。そのためにはまず、あいつらが休みの日にしていることをやってみなくちゃだろ。」


 そうなのだろうか。言われてみればそんな気もしてきた。


「とりあえず昼ご飯から。この店結構いいって聞いてるんだよな。」


「へーそうなんだ。」


「興味なさそうだな。まあいいや、入るぞ。」



「いらっしゃいませー」


「二人です。」


「二名様ですね、お席までご案内いたします。」


 案内された席に向かい合って座る。


「こちらでは、洋という国の料理を複数取り扱っております。メニューはそちらにありますのでご覧ください。ただ今の時間でしたらランチメニューがおすすめとなっております。それではごゆっくりお楽しみください。」


「「わかりました。」」


 ここはちょっとおしゃれな洋食屋らしい。


「こういうところって来たりする?」


「全く来ない。」


「やっぱりそうなのか。え、じゃあご飯っていつもどうしてるわけ?」


「フィスィと食べるかフィスィに作ってもらうか適当に腹が膨れるもの買って済ませるかのどれか。」


「…なるほど。一人で食事を楽しむとかはないわけだ。」


「フィスィと一緒じゃない食事に楽しさなんていらないでしょ。時間と金の無駄。食べなくてもいいと思ってるけど流石にお腹はすくし動きが弱るのは困るからね。」


「そう。否定はしないけど、色々な食べ物とか食べるの楽しいと思うんだけどな。」


「そんなことよりどれ注文する?」


「俺はこのハンバーグランチプレートにでもしようかな。サロスはどうする?」


「俺はなんでもいい。一番安いので。」


「だから一番安いとかで決めるなって。何が食べたいとかないのか?」


「そんなこと言われても食事の内容に興味ないし。」


「わかったわかった。俺がおごるから、このミックスグリル頼もう。それでいろんなもの食べよう。」


「奢ってくれるのか。じゃあお言葉に甘えて。なんでもいいよ。」


「ほんとに食事に興味がないんだな…。いいや、注文お願いします。」






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「奢ってくれてありがとう。」


「はいはいどういたしまして。どうだ、美味しかったか。」


「久しぶりに店で食べた気がするけど美味しかったよ。」


「うん、それは良かった。一人でもぜひ、ぜひ行ってくれ。」


「考えておく。」


「行かなそうだな…。そうそう、この店を紹介してくれたのディプラなんだけど、フィスィと一緒に来たこともあるらしいぞ。」


「え、そうなの?そういうことは早く言ってくれないと。もう少し味わって食べればよかった。」


「そう思うなら一人でもう一度行くんだな。」


「今から行っていい?」


「バカバカそういうことじゃない。なんで二連続で昼飯食うんだよ。そんなことより次行くぞ。」


「まだ行くところあるの?」


「当たり前だろ、これからだぞ?」


早く終わりたいんだけどなぁ。

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