第213話 売却と依頼 その2
「決めたわ」
ゾルたちと話しているとミサキさんが思考の海から帰還を果たした。どうやら、何か今後の予定でも思いついたようだ。
「早速で悪いけどダンジョン産のアイテムは全て買い取らせてもらうわ」
「ほぉ、それはありがたい話ですね。だったら商談を始めますか」
「ええ、そうしましょ」
まさか全て買い取ってもらえるとは思っていなかったのでミサキさんの申し出は有り難い。だが、売るにしても私が損をしては意味がないのでここはじっくり値段交渉といこうではないか。
「少し待てミサキ。それはクランの共有財産でゼロからアイテムを買い取ると言うことだろ? だったらその前に私がこいつと取引をする。自由に使える素材がないのはどうも不便だからな」
「それもそうね。だったらこうしましょう。まずは各々自己負担でゼロからアイテムを買い取り、余りは全てクランの共有資金で買い取る。それでいいわね?」
「それで構わん。おい、ゼロ、さっきの続きだ。とりあえず錬金の素材になるラットの内臓、ウルフ、スパイダー、スネーク、オウルの瞳を売ってくれ。値段は75万バースでどうだ?」
75万バースか。それならギルドに提出したときの報酬金額よりも高いな。私が損をしないのでこの条件でいいだろう。その後はミサキさんが毛皮、リアさんが薬草類、ゴルジアナさんが牙や角、アルがトレントンの素材をそれぞれ買っていき合計282万バースとなった。
「これで自分が欲しい素材は手に入ったわね?」
「ワシは買える素材がなかったがな」
「それは......諦めなさい。この迷宮にもきっとドガンが欲する物があるわよ」
ドガンさんだけ気の毒だが確かに迷宮の上層にはゴーレム系の魔物が出現するので出番がないというわけではないはずだ。ただ、ゴーレム系統は70階層よりも上層に出現するため今のところは住民が売っているものを買うしかないだろう。プレイヤーがそこを狩場にするのはあと数週間は掛かりそうだからな。
「それはそうと残りのアイテムはクランの共有財産として買い取るわ。これだけの量だし、いつも通りギルドの通常買取価格の1.3倍でいいかしら?」
「それで大丈夫です。それじゃあ、このアイテムをデミウルギア宛てに送ればいいですか?」
「いえ、私宛にして頂戴。クランの共有財産って言ってるけど実はまだクランの設立をしてないから名前だけなのよね」
「そう言うことですか。私たちも王都に行っていないので、同盟は設立してからですかね」
「そうなるわ。それと、今ゼロのインベントリ宛てに買取金を送っておいたから確認して頂戴。詳細についてはフレンドメールに送っておいたわ」
ミサキさんの言う通り私のインベントリの所持金が増えていた。元がどれ程だったのか覚えていないがログを見ればいいとして買取の詳細について見るためにフレンドメールを開けばズラーっと買取金額が書かれていた。詳しい内訳は省くが予想通り魔石の買取価格が一番高く殆どが1万バースを超えている。まあ、魔石のドロップ率自体が低いから大した量を確保できていないがそれでも総額は480万バースになっていた。実際は4796134バースだったようだがそこは切りよく480万にしてもらえたようだ。
この金額にさっきの282万バースを合わせれば約760万バースになる。僅か半日でこれだけ稼げたのには驚きだがそれでも転移石を買うとなれば7個しか買うことができない。まあ、一刀たちとの攻略を再開するまでは時間があるのでその間にできる限り稼ぎに行くとしよう。そうすれば一千万バースに届くだろうし、それで転移石を10個買うことができる。10個あれば10階層分スキップすることが可能になるので意外と十分かもしれないな。今日の探索で41階層まで進めば土曜、日曜で一日10階層進むだけで残りは転移石を使って目的の70階層に到達することができる。完璧な計画ではないか。
「なにニヤついているのよ。気持ち悪いわよ。それで、その買取価格で問題はないわよね?」
「問題はありませんがなかなかに辛辣ですね。それよりミサキさん、新しい装備を新調したいので依頼を頼めますか?」
「分かったわ。そこに座って頂戴。それでどんな装備にするのかしら」
ミサキさんに促されるままに席について早速装備の依頼内容について話を詰めていく。私が依頼した装備は全部で計2着分だ。いつも通りの神官をモチーフにした全身装備と和をイメージした全身装備だ。神官服はこれまた通常通りのINTとMNDにパラメータを振ってもらい和服の方はAGIとSTRにパラメータを振ってもらうことにした。ミサキさんの話によればシルクスパイダーのドロップアイテムが布由来の装備を作るのに適しているから良い物が作れるらしい。私はその中でも特に希少なシルクスパイダーの上絹と言うアイテムで製作を頼んだので完成が楽しみだ。
その後はリアさんにMP回復ポーションを売ってもらったり、ゾルが新たに作ったアイテムの効果を聞いた後に何点か面白そうなアイテムを買ってからミサキさんたちの下を後にして再びダンジョンに向かった。
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