第201話 パーティ VS ゴブリンキング その2
「右、ゴブリンジェネラルの討伐の確認完了。聖はそのままレオの補助に移れ。一刀、ダメージ量は?」
「武技アリで4割強だ」
ゴブリンジェネラルは残り1体となったので聖にはレオが相手をしているゴブリンジェネラルの妨害に移ってもらう。聖のオリジナルスキルの連続使用は圧倒的なダメージを叩きだしたが、やはりMP効率は悪く聖のMP残量は2割ほどになっている。そのためアーツでMPに余裕がある不知火のMPを聖に移しながら一刀に〈白黒〉による強化の結果を聞けば、武技を使えば前衛ゴブリンには5割近くのダメージを与えることができると返答が返ってきた。
それだったらと思考を一瞬で巡らせて次の一手を打つことにする。
「七種詠唱後、レオと聖は迅速にゴブリンジェネラルの討伐。その後、レオは後衛ゴブリンへ標的を変更し、聖は前衛ゴブリンの処理に移行。前衛ゴブリンの処理完了後ロード以外は後衛ゴブリンを叩け。ロードは自己強化で待機。私が最奥の3体を拘束した後に処理に移行。ゴブリンキング以外は拘束が解ける前に処理を完了させろ」
私の指示にそれぞれが返答して行動に移っていく。ただ、ロードだけは仮面に手を当て『倒してしまっても構わないですかな?』とかカッコをつけていた。なので、私が『やれるものならな』と言えば姿勢を正し、本気で集中し始めた。
あの状態に入ったのならばゴブリンキングでさえも確実に倒しに行くだろうな。MPの消費量無視で。まあ、戦闘も終盤なのでMP残量を気にしなくていいのは確かだが......やる気になっているなら水を差すことはしなくて良いかと私も魔術の行使に集中する。
魔術の効果を上昇させるために思考により行使後の状況を想像しながら詠唱の準備に入る。私とロードが詠唱の準備中にも戦況は常に動き、剣が交差し、魔導が飛び交う。今もレオがアーツでゴブリンジェネラルの大剣を弾き、そこに聖が放った矢が命中する。今回はオリジナルスキルを使っていないのでHPバーの減りは少ないが正確無慈悲の一撃はゴブリンジェネラルの右目を穿ち、矢が目に突き刺さっている。
一方、一刀と不知火はロードが後衛ゴブリンの妨害を止めたため、ゴブリンナイトたちによる攻撃でなく魔導などの攻撃も捌かなければならない状況になっている。多分、あの二人がこの戦場で一番忙しいだろうが今のところは問題なさそうなので援護は入れない。
一刀は体術のアーツを忙しなく使い攻撃を受けないように立ち回りながら即死判定になるゴブリンの首を1体1体着実に刈り取っている。不知火はそんな一刀にヘイトが向かないようにアーツで一刀からヘイトを奪い攻撃を一身に受けている。だが、不知火のPSとVITが高く大したダメージを受けることなく抑え込むことに成功している。
「【我 魂を清め穢す者 我が領域を侵す愚者には呪言を囁き我が親睦なる者には祝福を授ける 生死流転の権は我が手にあり〈連続詠唱 七種白黒〉】」
レオと一刀にAGI上昇のバフ、不知火にVIT上昇のバフを付与する。そして、闇魔術でゴブリンジェネラルに毎度おなじみバルネラブル、VIT低下のデバフ2種、最後にAGI低下のデバフを行使する。しかし、今回はVIT低下のエンチャント・ブラウンダウンとAGI低下のエンチャント・グリーンダウンしか成功しなかった。
だが、レオの様子を見れば問題ないといった顔をしていたので追加の援護はいらなさそうだ。それに今の連続詠唱で〈白黒〉の効果がさらに高まった。特に不知火はゴブリンアーチャーの矢による攻撃が直撃してもダメージを食らわなくなっている。元々ボス戦を始める前から全員に対してバフをかけておいたので、そのバフの効果が〈白黒〉によって上昇して戦況は一気にこちらが優勢になった。このままでも時間の経過と一緒に私たちが勝利を掴むことができる。
しかし、ここまで来たら徹底的にだ。私はもう一度、詠唱の準備を始める。私が行使する魔術がどのような結果を生むのかを想像しながらデバフの選択をし、〈白黒〉の制約に引っかからないように光魔術を闇魔術の間に組み込んでいく。
隣ではロードが詠唱を始め、ロードを囲うように12の魔術陣が出現する。あれを一度で行使しているのだから驚きだが、それと同時に今の魔術の行使でロードのMPが1割削れた。自己強化だけでどれだけMPを消費しているのだ。オーバーキルになる未来しか見えないな。
「ロード、行くぞ。【我 魂を清め穢す者 我が領域を侵す愚者には呪言を囁き我が親睦なる者には祝福を授ける 生死流転の権は我が手にあり〈連続詠唱 七種白黒〉】」
私が出せる全力はまだ7種のアーツを連続で行使するところまでだ。目標としては10種連続で行使できるよう仕上げていきたいがそれは追々として、今はこれだけでも十分な強化だろう。ロードの火力面は全く心配していないので乾坤一擲。ゴブリンキングに対してMND低下のデバフを2種類発動する。その他にはロードが行使する火、土、水の魔術のダメージを増加させるバフを更新する。
それからゴブリンキングを中心にゴブリンクイーンとゴブリンパラディンを範囲に含めて光の柱が10本伸びる。さらに私も唯一の攻撃魔術であるヘルオーラが光の檻の中で展開される。
「これでチェックメイトですな。それでは僭越ながら王の名を冠する汝に吾輩の本気をお見せしましょう。【煉獄よりいでし業火 残響する言霊 不動の如き古塔 刹那に過ぎ去る雷光 永劫に凍える樹氷 虚空に写る屍 対は天に昇り 汝はその身を地に刻む 愚者よ 今 己が運命を怨むがいい〈セクステットダブルマジック ピーラー・ランス六属〉】」
そして、十二の魔術陣が展開される。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます