第200話 パーティ VS ゴブリンキング その1

「バフが掛かるだけでも攻略速度は段違いだね。ゴブリンの種類も増えてきてたからもっと苦戦するか思ったけど拍子抜けだよ」

「このエリアは魔術士が最も得意とする場所だから仕方がないな。だが、31階層はここのように雑魚敵を一掃できないから攻略に時間がかかると思うぞ。私は戦闘無しで切り抜けたから1階層あたり1時間もかかっていないが戦闘込みで攻略すると余裕で1時間超えするだろうな」

「ふむ、それでしたら今日のうちに少し攻略しておきますかな?」

「いや、その必要はない。明日は私もやっておきたいことがあるから30階層付近で足止めを喰らうわけにはいかないからな」


 一刀たちとの攻略が始まり4時間程経過して29階層の攻略も終了した。なので、次はフロアボス戦になる。そして、フロアボスを倒したら31階層まで進みそこで解散の予定だ。順調にいけば今日は27時には解散できる予定だが31階層の攻略はパーティで挑むと何時間かかるかは未知数だ。


 それとロードができるところまで攻略を進めるかと提案してきたが明日の金策は40階層付近で行うためドロップアイテムの等級が不安定な30階層周辺はできれば遠慮したい。それに土曜、日曜の攻略のために40階層以降の魔物の強さなどを体感しておく必要もあるしな。41階層でも私の感知スキルを欺かれたのだ。ああ、早く戦いたい。あの緊張とそれを優越した時の達成感はたまらないのだ。


「ゼロが良いなら今日は31階層で解散だな。それよりゴブリンキング戦について話し合おう。ゴブリンキングの戦闘方法やその戦力について俺たちは認識しているが実際に戦闘をしたことがない。だが、ゼロは既に戦闘済みだろ? だから、お前が作戦について話してくれ」

「そうだな。だが、私が攻略したのはソロだからその時の行動パターンが今回にも適用されるかは分からんぞ?」

「それでも大丈夫だろ。多少は行動パターンが変化するかもしれないが基本的な行動パターンは変化しないはずだ」


 それならいいのだが。どうもあの時の戦闘を鑑みるにソロ専用の行動パターンだったような気もしなくはない。どう考えてもゴブリンジェネラルたちが動くのが遅すぎたしな。まあ、その時は仕方がない。臨機応変に対応すればいいだろう。それに一刀が集めた情報もあることだし、そこから大きく外れる行動はしてこないはずだ。


「まずは布陣だが最奥にゴブリンキング、クイーン、パラディンがいてその前にゴブリンジェネラルが2体位置する。ゴブリンジェネラルの前にはゴブリンウィザードたちの後衛職、最前線にはゴブリンナイトなどの前衛職が配置されていたな。戦闘が開始すると同時にゴブリンナイトが攻撃してくる。それを迎撃しているとゴブリンウィザードたちの援護射撃が飛んでくるがそれは近くにいるゴブリンを盾にすれば問題ない。次にーーー」


 それから私たちは作戦を煮詰めていく。やはり、私が戦ったと時と一刀が集めた情報では違いが生じたがそこは一刀の持っている情報を根幹に作戦を構築することで対処する。




〈ボスエリアに侵入しました。戦闘を開始します〉


「作戦通り一刀、レオ、不知火は前衛ゴブリンの処理、聖は後衛ゴブリンたちの援護射撃の迎撃、ロードは後衛ゴブリンに攻撃を仕掛けろ。私は適当に動く」


 戦闘開始のアナウンスが鳴ると同時に指示を出してすぐに展開する。さっそくレオが飛び出し、ゴブリンナイトと剣を交わし始める。その隙を突くようにゴブリンマギソードもゴブリンナイトに加勢するがその雷を纏った攻撃は不知火が盾で防ぎ、さらに盾で押し返す。

 それに対して一刀が追撃を加えながらレオの補助に徹するように行動する。さらにはゴブリンたちの合間を縫うように行動しながらヒットアンドアウェイを繰り返し、自身と不知火だけにヘイトが向くようにしてレオが動きやすいようにしている。


 そして、攻防の最中のレオたちを狙い魔導や矢が放たれるが聖がオリジナルスキルを使用することで魔導を迎撃し、その際に生じた爆風で飛び道具の軌道も逸らしている。ロードは広範囲魔術を使うのではなく、ハイファイヤーバレットなどのリキャストタイムが短い魔術を使い確実に相手の行動キャンセルを誘発している。


「作戦移行! レオは左のゴブリンジェネラルの足止めを頼む。右のゴブリンジェネラルは聖が遅延担当。15秒後に5秒間だけオリジナルスキルの連続使用を許可する」

「任せろ!! ハイスラッシュ!」

「了解。僕の方には無低下をお願いね......ハイヘビィショット」

「入るか分からないがやれるだけやろう」


 やはり、と言うべきか私が戦った時とは行動パターンが異なり、2体のゴブリンジェネラルが動き出した。ゴブリンキングたちは前回と同じゴブリンクイーンがバフを使っているだけで動きはないのでそちらは無視し、ゴブリンジェネラルの対処を優先することにする。2体のゴブリンジェネラルが前衛ゴブリンたちと合流されると不知火だけでは捌くことが難しくなる可能性がある。だから、ここでゴブリンジェネラル1体には退場してもらわなければならない。


 流石のレオでもオリジナルスキルを使わなければゴブリンジェネラルを瞬殺することはできないだろう。それに比べてMP消費は激しいが手軽に使えるオリジナルスキルを持つ聖にゴブリンジェネラルの処理を頼むことにした。

 もちろん、今の状態でもオリジナルスキルを使えば聖はゴブリンジェネラルを倒せるだろう。だが、それだとMPの無駄になるし、次の展開的にも影響が出るのでそれまでのカウントを設ける。その間に私はーーー


「【我 魂を清め穢す者 我が領域を侵す愚者には呪言を囁き我が親睦なる者には祝福を授ける 生死流転の権は我が手にあり〈連続詠唱 七種白黒〉】」


 連続詠唱をし〈白黒〉の効果を上げていく。今回発動した光魔術はハイエリアヒール、シールド、MPコンバージョン。闇魔術はバルネラブル、ディルシャン・ボイド、ハイディルシャン・ボイド、エンチャント・クリアダウンだ。光魔術は不知火とレオの補助のために使っただけだが闇魔術は全て聖が対処しているゴブリンジェネラルに向けて行使した。


 聖が属性ダメージを狙っているようだったのでゴブリンジェネラルには無属性攻撃によるダメージ量が増加するデバフとMNDを減少させるデバフのプレゼントだ。ありがたく受け取って欲しい。そんな願いが通じたのか耐性を貫き、デバフはレジストされることなく全て発動されていく。


「カウント開始!」

「〈瞬間装填〉〈属性付与・無〉〈属性解放〉。軌道修正、着弾予測完了!!」


 オリジナルスキルが発動すると聖の弦を引く矢が2本になり、さらに鏃にダンジョンの天井まで立ち昇る半透明のオーラが纏わりつく。そして、私がカウントを数えるのと同時に二本の矢が放たれる。


 打ち出された最初の二本の矢は一本が脳天、もう一本が喉元を正確に打ち抜き鏃がゴブリンジェネラルに触れた瞬間に属性爆破が起こる。だが、それで終わることはなく第二波、第三波と幾度となく続き第七波目の属性爆破を起こして聖の攻撃が止まった。


 そして、爆破によって舞い上がった砂塵が消えた後には無惨にも肩から上が消失したゴブリンジェネラルの死体だけが残っていた。

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