第26話 薬草採取 その2

「リアさんこんなもので良いでしょうか?」

「はい、ありがとうございます。でも、できれば根っこごと採取してもらえますか? スキルの植物知識によるとここらにある薬草は葉の部分より根っこの方が効果が高いみたいなので。それに太陽草などは近くに同じものがあるとその近くにまた生えてくる性質があるので取り過ぎに気をつける必要はありません」


 植物知識は補助スキルだが魔力操作と同様に便利なものが多い。それにリアさんは良質な素材でポーションを作ろうとしているからこのスキルは役に立つだろう。

 

 先程と同様に近くに生えている薬草を採るが今度は根っこも取り出すように採取する。太陽草の根っこはタンポポとおなじで主根と側根だった。確かに根っこを使うのにそれがひげ根だったら使いにくいだろうしな。


〈太陽草〉 一般級 ☆3

HP回復ポーションの原料となる素材。そのまま食べても少しだけ効力を発揮する


 今度は最初に採取したときよりもレア度が2上昇している。

 よく市場で見るのは葉っぱだけだったりするから知らなかった。あれはぼったくりだろ。いや、知らない方が悪いのだろうか? 始まりの街には無いが図書館などに行けばこう言った事を知れるかもしれないがスキル1つあるだけで分かると言うのは便利なものだ。


「これでいいですか? 根っこごと取るだけでこんなに簡単にレア度が上がるのですね」

「そうよ。それに採取のスキルがあればもっとレア度が上昇するわよ。βの時に少数だけどいた農家のプレイヤーが栽培していた薬草は等級が1つ上だったわ」

「そうだったんですか。生産職の有り難さは分かっていますがずっと前線にいたので知りませんでしたよ」

「βテストの時にいた生産職をないがしろにするような輩は許せないけどまあ、あなたはそれでいいんじゃ無いかしら。あなたたち戦闘職が素材を持ってきて私達が加工する。そんな関係で良いのよ」


 たしかにβの時にいた輩はひどかった。生産職は自分たちのために装備を作るのが当たり前だ、とか言ってたからな。だが、それに怒りを感じた生産職に制裁を食らってそれ以降プレイヤーメイドのアイテムなどは何も売って貰えずに引退に追い込まれてた。


「それよりもう少し奥で採取しない? ここより奥なら品質が高いのがあるかもしれないわ」

「ええ、そうですね。奥に行きましょう」


 ミサキさんが奥に行こうと提案したが確かにここだと周りに太陽草と月草だけしかない。もう少し奥に進んで違う種類の薬草も採取したいところだ。


 ここ中央王国は国の周りを山脈に囲まれていてその山脈には守護、聖獣なるものがいるらしい。なので山脈の周りには魔物が出現しづらく山脈の中央に行くほど作物が豊かになる。

 その代わり、この山脈を通って他の国に行くことができないみたいだ。だからこの国から他国に行くのに魔道艇を使って移動する。まあ、他国に移動するには王都に行かなければならないからまだまだ先の話だ。


 森を進むこと10数分。麓よりも確実に薬草の類いが増えてきたところで採取を再開した。


「それじゃあ、再開しましょう。リアさん、ここにあるのも根っこごと採取で大丈夫ですか?」

「はい、大丈夫です。ですがここにある解毒薬の作成に必要となる吸毒草は葉っぱに毒性があるので注意してくださいね」


 吸毒草は解毒薬の素材になるがこの解毒剤では私が使うポイズンを解除できない。私が使っているポイズンは魔術であってこれに掛かると相手はステータスに毒と表示されるが魔術は魔術でなければ解除出来ない。

 ただ、魔術によって掛けられた状態異常は効果時間が短いという欠点がある。それに対して通常の状態異常は魔術以外の要因で引き起こされる状態異常のことで効果も高く、継続時間も長い。そのため、解毒薬は需要が高く、より高品質のものが求められている。


〈太陽草〉 一般級 ☆5

HP回復ポーションの原料となる素材。そのまま食べても少しだけ効力を発揮する


〈月草〉 一般級 ☆5

MP回復ポーションの原料となる素材。そのまま食べても少しだけ効力を発揮する


〈吸毒草〉 一般級 ☆5

解毒ポーションの原料となる素材。調薬をしないと解毒の効果は発揮されない


 採取完了っと。太陽草と月草は20本ずつ。そして、吸毒草は5本だけ入手することが出来た。それに森の奥に来ただけあってアイテムのレア度が上昇している。

 リアさんによると薬草は5本で1つのポーションが作成出来るみたいだ。思っていた以上に薬草を使う。今度、時間があったらこまめに採取していこう。


「そろそろ時間だし帰りましょ」

「はい。そうですね。これだけあればたくさんポーションを作れます。ありがとうございます」


 もう終了の時間が迫っていたか。リアさんも満足しているみたいだし、今日はこれくらいにして始まりの街に帰るとしよう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る