第11話 ウサギ狩り その3

 エンチャント・グリーンアップ最高!!

 今の私のINTは30なので現在AGIが11になっている。おかげで格段に速く動ける。まるでホーンラビットが止まって見えるかのようだ。

 やはりAGIが高いと便利だ。流石はエンチャント・グリーンアップ。

 主に私にだが最強のバフと言われているだけはある。

 しかし、先ほどからずっと魔術を使っていたためMPが限界に近い。しかたないのでそろそろ始まりの街に戻ろうと思う。

 今回の結果はホーンラビットの角とホーンラビットの肉が多数。そして最後にレアドロップだと思われるホーンラビットの尻尾を入手した。


「10万バースまではまだまだ遠いな。それに装備も変えなければいけないし、出費が多くて困る」


 とりあえず書術のアーツであるメディテイションを発動させながら始まりの街に向かう。

 メディテイションは他のアーツを使用しない限り徐々にMPを回復してくれる。


 人気がないこの場所に来るまでにだいたい30分ほど掛かっているので始まりの街に着くまでに後、数戦は出来るだろう。




 大体10分くらい歩いたところで前方にホーンラビットを見つけた。それもただのホーンラビットではなくあれは絶対にホーンラビット・ゴールドだ。

 AWOには今まで見つかったフィールドにいる通常種には必ず名前の最後にゴールドと名のつく魔物が存在しており、その魔物は通常種よりも遙かに経験値が高く、通常ドロップに加えて確定でレアリティーの高いアイテムをドロップする所謂ボーナスモンスターだ。

 しかし、なかなか姿を見せず、さらに通常種よりも強いためかなり苦戦する相手だ。

 だが、なんとしてでも倒したい相手でもある。ホーンラビット・ゴールドが落とす確定レアドロップも気になるが、黄金種から落ちる通常ドロップも今の段階だったら良い金額で売れるだろうからな。


「ここは慎重に行こう。まずはエンチャント・レッドアップ。それとエンチャント・グリーンアップを掛けてっと」


 ここまでの道すがらメディテイションを発動し続けたままだったのでMPもだいぶ回復している。


「エンチャント・グリーンダウン......ライト。さらに追加の一撃っと!!」


 ここはとにかく相手からのダメージを受けないようにしなければいけないため、自分のAGIを上昇させると同時にホーンラビット・ゴールドのAGIも下げておく。

 相手の攻撃を一撃でも食らえば瀕死は確定だ。

 ついでに私の本気の右拳も打ち込んでおいた。拳がホーンラビット・ゴールドに触れてから数瞬後、追加でさらにホーンラビット・ゴールドの身体を揺らす・・・


 ミュゥゥゥゥ


 ホーンラビット・ゴールドは私の攻撃を受けて少しよろめいたが、何事もなかったかのようにこちらを見る。

 ちなみにだが小型のウサギを想像してる人がいるかもしれないので言っておくが、ホーンラビット・ゴールドは全長3メートル超えだ。


「ポイズン......エンチャント・レッドアップ」


 今は相手のHPがどのくらいあるか分からないのでMP管理は慎重に行きたい。だが、早く白黒の効果も上昇させたいジレンマに襲われている。


「ナイトビジョン......ライト。おっと危ない!?」


 白黒を継続させるため視界を明るくするアーツであるナイトビジョンを使い、それと同時に目くらましのためにライトを使った。

 その瞬間、ホーンラビット・ゴールドが急に突進してきたため危うく当たりそうになってしまったが、半身をズラすことで何とか避ける。


「ああ、くっそ!! ポイズン。危ない、な。エンチャント・グリーンアップ」


 ポイズンの効果が切れそうになったため掛け直していると再度ヤツが私に対して突っ込んでくる。そして、まさかのムーンサルトを決めてきた。

 これには流石に驚いて掠りそうになったがなんとか回避することが出来た。




 その後も攻撃を避け続け、時にはポイズンを掛けて状態異常でダメージを狙ったり、エンチャント・グリーンアップで自身を速くしてエンチャント・グリーンダウンでホーンラビット・ゴールドを遅くしたりと5分以上戦闘を続けている。


 しかし、残念なことにMPは枯渇寸前でさらに白黒の効果が十字架を10個ずつ召喚して以降、それ以上十字架が増えなくなり、効果上昇の打ち止めが来てしまった。


 だが、まだ負けたわけではない。


 白黒の効果で私のSTRが22、AGIは21とレベルにして約4レベル分パラメータが上昇している。

 さらにホーンラビット・ゴールドも濃い紫色の靄に包まれて極度の毒の状態異常に陥っており、瀕死の状態だ。


「ああ、やっぱギリギリな戦いは楽しいな。でもそろそろ終わりにしよう、ホーンラビット・ゴールド。いや、長いからラビット・ゴールド。最後はかっこよく殴り合い、といきたいところだがお前の攻撃が1発でも当たれば多分、死ぬから最後までこのスタンス貫かせてもらうぞ。ほれ、エンチャント・グリーンアップ......ポイズン」


 そんなことを言いながら私はホーンラビット・ゴールド改めラビット・ゴールドにポイズンを掛け、AGIのバフを維持しながらさらに数分間逃げ続けた。




〈戦闘が終了しました〉


 そうして終に私はラビット・ゴールドに勝利した。

 勝ち方がずるいだって? それについては言い訳をさせてもらいたい。もしも勝ち方に拘ったら確実に負けていた。だからそこは許して欲しい。いや、切実に。

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