第12話 【 演出 】
太狼は、メリーさんと名乗る幼女の面倒を見ながら、
買い物に行っているメリーさんが帰ってくるのを待っていた。
すると、鍵の開く音と共に、太狼の家の玄関の扉が開いた。
「ただいま戻りましたぁ……」
「メリーっ! 待ってたぞ、よく帰ってきたなっ!」
「……えっ!? ちょ、どうしたんですか? 太狼さん……」
突然、出迎えてきた太狼に、メリー(少女)は困惑していた。
「なぁ、都市伝説のメリーさんっていっぱいいるのか?」
「……へ?」
「なんか、新しいメリーさんが来たんだが……」
「ちょ、何言ってるんですか?」
「口で言ってもダメだ、ちょっと来てくれっ!」
「……え? ちょちょちょ……」
太狼はメリーさん(少女)の手を引いて、
リビングで寝ているメリーさん(幼女)を見せた。
「太狼さん、これはさすがに犯罪ですよ?」
「ちっげぇよ、連れ込んだんじゃなくて来たんだよっ!」
「本当に? この子もメリーさんなんですか?」
「俺には人間にしか見えないが、そうなんじゃねぇのか?」
「でも確かに、僅かですけど霊力は感じますね」
「あっ、あるのね。そういうの……」
「まぁ一応、幽霊ですからね」
太狼は目を細くしながら、少女と幼女を見比べていた。
「あのさ、一つ聞いていいか?」
「……なんですか?」
「お前ら、どうやって俺に電話かけてきてるんだ?」
「それはもちろん、テレパシーですけど……」
「……携帯じゃねぇのかよ」
「まぁ、年齢によっては携帯なんて買えませんからね」
「そこにリアルの制限を持ってくんなよ」
「しょうがないじゃないですか、あれは実機なんですから」
メリーさん(少女)に、太狼が呆れて言葉を無くしていると、
寝ていた方のメリーさん(幼女)が、ゆっくりと目を覚ました。
「……あっ、起きましたね」
「……よぅ、目が覚めたか?」
「……誰?」
「初めまして、あたしメリーさん。あなたは?」
「あたしね、メリーさんって言うの。よろしくね」
「…………」
「…………」
「……な? 言ったろ?」
「……は、はい。見たいですね」
「これ、俺はどうしたらいいんだ?」
「どうするもこうするも、ここは太狼さんのお家ですよ」
幼女はダボダボの服を紐で結んで、
来やすいサイズに調整された服を着ていた。
「あの、この服なんですか?」
「お前と同じで、ボロボロの服を着てたんだよ」
「まさか、洗って着替えさせたんですか?」
「仕方ねぇだろ、お前と同じで泥だらけだったんだよ」
「まぁ、私たちはゴミ捨て場から来てますからね」
「お前ら、一人を襲ったらゴミ捨て場に戻るのか?」
「そうですね。スタート地点は決まってるので……」
「律儀だなぁ、んなもんどこでも同じだろ」
「それじゃあ、急な通り魔と同じじゃないですかっ!」
「人を刺しに来てる時点で同じだろッ!!!」
「徐々に迫ってくるところに、意味があるんですっ!」
「なら、せめて汚れ拭いてから来いよ。部屋が汚れんだろ」
「汚れてた方が、驚かす時は迫力があるんですよ」
「はぁ……。ったく、要らねぇ演出加えやがって……」
面倒くさそうな顔をしながら、太狼は言葉を返していく。
「とりあえず、あたしは晩御飯を作りますね」
「あぁ、分かった。俺はこいつの面倒を見てる」
メリーさん(少女)はエプロンを付けると、料理を作り始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます