脱出せよ! 危険な遺跡

「ジャン! ジャン!!」

姉貴あねき!」

あぶないッス!」

「やだやだ、ジャン! ジャン!!」

 いまだごうごうとながれるみずなか先程さきほど巨大生物きょだいせいぶつからだおおきくくねらせ、ジャンを一呑ひとのみにしようとあばまわる、のたくりまわる。その正体しょうたい巨大きょだいなウミヘビだった。いまにもべられそうなジャンは必死ひっしにその口元くちもとにカットラスをして抵抗ていこうするが、うろこがかたく、びくともしない。

「ボクならなんとかできるよ!」

「ちょ! ちょちょちょい、ピオ! やめるッス!」

いまればあぶないです! さっき大変たいへんだったでしょ!」

「でもでも!」

「だめなものはだめなのです!」

 今度こんどはピオがそうとし、それをこちらにのこったほかメンバーで必死ひっしめた。そのあいだにもジャンがみず大量たいりょうんでしまい、あばれる右手みぎてしずみ。

 ――ジャン!!

「どうしよう、ジャンがんじゃう!! べられちゃうよ!!」

「い、いま必死ひっしかんがえてるッス! とりあえずアネキはくッスよ!」

「パニックは事故じこもとbyバイ船長せんちょう

 ドンクが背中せなかをなでてくれたおかげでようやくいてきた。そう、いてまわりをよくかんがえるのよ。ソフィー。

 どうすればい!?

 まわりをかこみず激流げきりゅうはどんどんとみずかさをしてきた。たまらなくなって一段いちだんたか足場あしばのぼるけれど、もうあとい。どうしよう!

「えーと、えーと!」

 そのときふと、周囲しゅういったかべ破片はへんびこんできた。瞬間しゅんかんぴんとひらめくものがある。――これだ!

「えい!!」

 全力ぜんりょくりかぶり、いしつぶてをヘビのかってげつける。しかし相手あいてはやぎるうえちいさすぎて全然ぜんぜんたらない。クソ! たってよ!

「それならおねえちゃん、ぼくまかせてよ!」

 そのとき、リオがわたしからいしつぶてをひったくってふところからあの格好かっこういいパチンコをした。

「ルイ、ピオ!」

「はいはいきました」

「ダッコはんたーい!」

 くわえてルイとピオが合流ごうりゅうちいちゃなピオだけはルイにかかえられており、いやがってじたばたあばれている。

「な、なにするの?」

射的しゃてきだったら、得意分野とくいぶんや……!」

 そこまでってリオが真剣しんけん様子ようすでパチンコをあらためてかまえた。そのうしろからルイとピオがこうをまじまじつめる。

 どきどき……。


 ……。


 ……、……。


いまです!」

「ゴー!」

「りゃあっ!」


 はなたれた破片はへんはまっすぐんでいき、見事みごとヘビのちいさなにクリーンヒット!

「やった、すごい!」

 ギエエエと大声おおごえててヘビがめちゃくちゃにあばれる。そのくちからまるでゴミでもすようなかんじでジャンがした。もうわれないように一生懸命いっしょうけんめい首元くびもとにしがみつくが、それも時間じかん問題もんだい。かなりつらそうなかおしてる!

「で、このあとどうすればいの!」

「じゃあボクく!」

「だから、ピオ!」

 またピオがあばれてそれをルイが必死ひっしおさむ。

「だってボク! 動物どうぶつとおはなしできるし!」

「そんなの非科学的ひかがくてきです!」

「ボクならオトモダチになれるの! あたまいルイとはちがうし!」

「ピオ!」

 ――と、瞬間しゅんかんこえた言葉ことばみみうたがった。

「え、って」

「ん?」

「ピオ、動物どうぶつはなせるの!?」

「だからさっきからってるじゃん、ボクならなんとか出来できるって!」

「……!」

「ありえません!」

 心臓しんぞうがばくばくった。

 たしかにちょっといただけじゃこんなのありえないし、こんなところびこませるのもあぶない。でも、まえのヘビが大人おとなしくなるための方法ほうほうはこれしかないのも事実じじつ……。

 ……。

 ちょっとかんがえてから二人ふたりでじたばたやってるところあらためてなおった。それをドンクとディーディーがしずかに見守みまもる。


「ピオ、ちからして。わたし、ジャンをたすけたいの!」


 ピオのがこれまでないぐらいかがやく。


  * * *


「ジャン! ってて! いまくから!」

「あ、アネキ……やっぱオレたちが」

大丈夫だいじょうぶわたしかせて」

「でも……」

 それでも心配しんぱいそうにゆがむかおに、にこっとほほむ。

「あら。わたし、もう王国おうこく大事だいじなプリンセスじゃないのよ? まもってもらわなくったってケッコーケッコー、コケコッコー!」

「アネキ……」

「だから今回こんかいだけでもかせて、おねがい。ジャンをすくいたいの。こので、わたしが」

 ちょっとかんがえてからすこなみだかぶじりをふきふき。ディーディーのかおがきりっときしまった。

命綱いのちづなむす確認かくにん、ヨシ! アネキ、はらいたくないッスか!」

平気へいきよ!」

「ピオも大丈夫だいじょうぶ

「よし! そしたらアネキたちいのちはこっちにまかせるッス! ――オヤブンのいのちまかせたッスよ」

「おう! まかせてちょうだい!」

「マカセテチョウダイ!」


 ピオをかかえながらかれらにちか位置いちまで距離きょりをつめていく。

 二人ふたりまもってくれるからって油断ゆだんをしたらどうなるかからない。足下あしもとながら慎重しんちょう近付ちかづいてった。

「ヘビさん、ヘビさん! シャシャ! シャーッ!」

 ピオがからだおもばしながら大声おおごえはなしかけるけど反応はんのうい。ジャンと格闘かくとうしたままだ。

みずおとがうるさいのかしら」

「もっと近付ちかづいて!」

かったわ」

 もっとギリギリまで近付ちかづいてりながらそのとどまる。

「ヘビさん! ヘービーさーん!」

 至近距離しきんきょりまでさわぐけどやっぱり反応はんのうがない。

 どうして!

「ねえピオ、これってどういう――」

「……ない」

「え?」


「あのきてない! ヘビじゃない!」


 ええっ!?

 わたしはますます混乱こんらんしたけどルイはいちはや理解りかいした。

かった、まえ巨大生物きょだいせいぶつ機械きかい人形にんぎょうです!」

「えええっ!?」

 なによそのロマンぶちいてる素晴すばらしいひびきは!

眼帯がんたいのおじさん!」

「おじさん、じゃ、ねえ!」

 そこにはきっちり反応はんのうするジャン。意外いがい元気げんきなのかもしれない。

「そのヘビはものじゃない、だからこわせます!」

「で!? どうしろと!」

です! かた装甲そうこうまもられていないのでそこをカットラスでして大穴おおあなけるんです!」

「そしたらどうなるんスか!?」

機械人形きかいにんぎょうみずにめちゃくちゃよわいんです。だからそれでぶっこわれるハズ」

 いた船長せんちょう最後さいごちからしぼってうごかないからだ無理むりひるがえし、かおちかくまでよじのぼっていく。自分じぶんにしがみついているおとこ真意しんい気付きづいたらしいウミヘビはかおおおきくってそいつを激流げきりゅうとそうと必死ひっしだ。

「あ、ああああぶない!」

 しかしやっぱりそこは流石さすがうみおとこあらしうみにもまれてもマストからはなさない(らしい)かれ握力あくりょくほうはるかにまさっていた。

 なんなく付近ふきんまで辿たどいたかれのカットラスがギラリとひかって――。


「タアアア!!」


 バシッ!! ビリビリッ!


 キシャアアアア!!


 ものらしくないおと物凄ものすごさけごえをあげてヘビがさっきより無茶苦茶むちゃくちゃあばまわり、やがてどうとたおす。

「うわあああ!!」

「ジャン!!」

 ぶっばされたかれおもわずした。

「おねえちゃん!」

「ピオをおねがい!」

まかせるッス!」

 激流げきりゅうからだにぶつかり一気いっきにさらわれる。

「ジャン、ジャン!」

 みずすこんだが、右手みぎてかれこごった左手ひだりてをつかんだ!

って!」

「せーの!」

 わたしこえ命綱いのちづな一気いっき一同いちどう

 ふるえるつめたいからだちからいっぱいきしめて私達わたしたちはようやくみんなもと帰還きかんした。

 ――と、安心あんしんしたのもつか

 ヘビがたおれたとき衝撃しょうげきで、なんとかかたちたもっていた遺跡いせきがどんどんくずれていく。ヘビがはいずりまわっていたゆかいきおいよくたおれたところからあないていき、激流げきりゅう渦巻うずまいてさらしたまでながれてく。

みんなつかまるッス!」

「「わあああああ!」」

 物凄ものすごながれに最早もはや抵抗ていこうはできず、あずけたまま下方かほうながされていく。

 そのままっこちたのは薄暗うすぐら坂道さかみちだけでできた部屋へや


 ガコン。


「ガコン?」

 リオの何気なにげないつぶやきに一同いちどううしろをかえるとそこにはクソデカイ球状きゅうじょういしいまにも私達わたしたちみつぶそうとせまりくるさま――


げるッス!!」


 ぎゃああああ!

 絶叫ぜっきょうしながらみんなでめちゃくちゃにはしる。うしなってしまったジャンはドンクがおぶった。どもたちいてはげましながらはしる、はしる!

 はばぴったりのいしはどんどんスピードをげながらせまってきた。

 お、おいちゅかれりゅ、ぬ、ぬ!

「あ! あそこ、てください!」

ひかりだ!」

びこむッス!」

 うしろのいしとの距離きょりわずかに数十すうじゅセンチ!

 ぎりぎりのところけこむと、まえには天井てんじょうからびたツタ!

「わああああ!」

 おもわずびつくと遠心力えんしんりょくとかいうものがかかってこうまでぶっばされる。

「げふっ!」

 った! ……ひざすりむいたかも。

大丈夫だいじょうぶッスか! アネキ!」

 はるとおくからこえるディーディーのこえ

 ふとそちらをるとはるとおくにみんなえた。そのあいださえぎるようにぼっかりいているのは巨大きょだいあなそこほうはがくらになってえないほど巨大きょだいさ、まさに「ぽっかり」よりも「ぼっかり」ぐらいがよく似合にあう。

 ま、てよ、ちょっとてよ? こんな大穴おおあなわたしはターザンみたいにわたってきたってうのか? おい。

 今更いまさらながらあしふるえてきた。

「こ、こっちにかえってこれるッスかね」

「あ、でも……ちょっとって」

 わたしがたどりいた「こうぎし」のさらおくからなにやらひかりえる。そのさきにはくさにおいでちた部屋へやと……出口でぐち

 ああ、お日様ひさまだぁ!

みんな! こっち、出口でぐちつながってるよ! はやくおいで!」

「マジッスか!?」

 出口でぐち二文字にもじ各人かくじん反応はんのうしておどるけど、今度こんどなにやら不思議ふしぎな「カチッ」というおとひびいた。ピオがなんんじゃったー、とにへらにへらわらう。

「カチッ?」

 またリオがつぶやく。

 またうしろをくと今度こんどはトゲがジャキンと殺意さついむきしのかべせまりくる!

「デジャビュー!!」

 大慌おおあわてでみんながツタをつかみ、恐怖きょうふえこちらがわにくるけど今度こんどはドンクがだいピンチ! がふさがってツタをつかめない!

「ど、ど、どどど、どうしよう、どうしよう」

 ジャンをおぶったままぐるぐるまわるドンク。そうこうしているあいだにもかべはどんどんせまってきた。とどまってもぬし、抵抗ていこうしてもぬし、ちてもぬし! ……相当そうとうピンチってやつなのでは?

 そのとき、また妙案みょうあんおもいついたのはルイ。

おおきなおじさん! その怪力かいりき僕達ぼくたち使つかったツタを天井てんじょうからいてください、いそいで!」

「が、がってん」

「そしたら眼帯がんたいのおじさんと自分じぶんをツタをはさむように配置はいちしてからおたがいをぐるぐるきにするんです! ――あ、でもちないようにあししたにひもをとおして」

 なるほど! っこひもの要領ようりょうね。

 しっかりきしているあいだにもかべはどんどんせまってくる。天井てんじょう付近ふきんまでつづかべのトゲはいまにもツタをりそうでこわい。

はやく! はやくするッスよ!」

いそいで! おじさん!」

「オオイソギ!」

「ドンク!」

かってる、かってるってば、かってるってば」

 あと十数じゅうすうセンチで足場あしばがなくなるというところ準備じゅんび完了かんりょうかべのトゲの部分ぶぶんってこちらにいきおいよくっこんできた。

「てやあああ」

 ――と、その瞬間しゅんかんぷち、とかってツタが……!

「ドンク!」

「アニキ!」

「「「おじさん!」」」


「てややあああ」

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