転生して友人キャラ(女)になったけど、先行きが不安です
ヘイ
第1話 保育園児のけいちゃん
ゲームの友人枠に憧れた。
陰で支えると言うのも、なんだかんだで主人公に頼られるのも。
主人公にはなりたくない。
それでも、その友人ではいたいという承認欲求が俺の中には芽生えていた。
と、言うわけで……。
俺は友人キャラになりましたとさ。
神様的なサムシングに『Hey! そこのYou! 転生に興味なぁ〜い?』と聞かれて、『え、出来るんですか』と尋ね返したらサムズアップをくれて、気がついたら幼い少女になっていましたとさ。
まあ、性別の概念は割りかしにどうでもいい。
俺は男女に拘ったことは特にないし、人を好きになったこともない。
そんななのに、友人キャラが出来るのかという疑問だが、スクリプトを読み上げるように会話をすれば……。
なんてリアルに通用するわけでもない。
「ねぇ、けいちゃん!」
「ひっ……!」
突然、声をかけられて俺は保育園の先生の足の後ろに隠れてしまう。
分かってるんだ、あの神様が言っていた主人公は多分、こいつなんだ。
「?」
「
「でも、みんなであそんだほうがたのしいよ?」
俺は、重度の対人恐怖症だ。
正直なところ今、通ってる保育園だとこの先生くらいしか信用できない。
智也も俺にとっては恐怖の対象なんだ。
と言うか、子供に関しては絶対に信用しない。純真無垢な顔をしてカマキリの卵を素手で持ってきたり、トンボを捕まえて尻尾を食べさせたりと天使の顔をした残虐な悪魔なんだぜ。
「うぅ〜っ!」
「ほら、他にもお友だちいるでしょ?」
「……わかった!」
ふぅ〜、何とかなった。
悪いな、神様。もうちょいコミュ力増強とかのチートがあった方が良かったかもしれない。
「もう、京ちゃんは人見知りね」
「…………」
頭を撫でられるのは嫌いじゃない。
でも、好きになったのは最近の話だ。前までは本能的に避けていたから。
困った、みたいな顔をされて俺は少しだけドキリとした。まるで、自分が何かを失敗したかのような、失望されたかのような。
だから見たくなくて、俺は俯く。
「でも、人はそれぞれだからね」
「……?」
恐る恐る視線を上に向けて見れば先生の顔には笑顔がある。俺が一番好きな表情だ。
「京ちゃんは京ちゃんの速さで生きてけば良いの。……って言っても難しいかな?」
困ったような顔を見たくなくて、俺はその言葉に頷いた。
困ったように笑う先生の顔に、俺は「ああ、優しい人なんだな」と心地よさを感じていた。
「けいちゃん!」
「ぴっ……!」
「また来たの?」
た、たのんます、先生。
どれだけ優しくても、俺は子供とも分かり合えないんだ。俺は先生としか分かり合えない!
「け、京ちゃん!?」
うぅ〜、離さんぞぉ。
絶対に離さないからなぁ。先生がいなきゃ、俺は生きてけないんだよ。
「サッカー、やろ?」
「……やだ」
「なんでぇ!?」
「やだから!」
「やるの! けいちゃんもやるの〜!」
「やだやだやだ!」
互いに駄々をこね合う。
精神年齢大人なんだから大人しくやってやれよと言われても嫌なものは嫌なんだ。
「なら、先生とやろっか」
え?
ま、待ってよ。
俺を置いていかないで。
「や、やる!」
「良いの、京ちゃん?」
「ほんと!?」
「せ、せんせいも……」
俺は不安げに見上げると先生も仕方ないかなと言いたげに笑って俺の左手を取る。
「よーし、じゃあ京ちゃんは先生と同じチームだねっ」
「うんっ!」
ふはははは、先生は渡さんぞ小僧め。
「ありがと、けいちゃん!」
「…………」
「?」
「っ」
先生を壁にして、俺と智也の戦いが始まる。と言っても、顔を合わせたくないという下らない戦いだ。
「ばっ!」
「ひっ……」
「こーら、京ちゃんを怖がらせちゃダメよ?」
べ、別に怖がってなんかないし。
ちょっと涙出たくらいだし。
てか俺、このガキと友達になれんのかな。いや、正直なところ問題があるのは智也の方じゃなくて、俺の方なんだけどもさ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます