第54話

 警察署からの帰り道にて。

 

 今日も座っているだけの仕事を終えて、家に帰る途中。

 

 『父さん、僕いつまで家にいればいいの?』


 息子から電話がかかってきた。


 『すまん。もう少し待ってくれ』


 『えー!昨日、明日なんとするからって言ってたじゃん』


 『こっちにだって、事情があるんだよ。この件はお父さんが必ず何とかするから、それまでは我慢してくれ』


 『・・・分かったよ』


 ツーツー。

 通話が切れた。

 理解の良い息子で助かる。


 家に帰ったら息子を慰めてやらなければ、そう思い、足取り早く自宅へと・・・。


 「動くな」


 後ろから、声をかけられた。


 「もし、動いたら刺す。声を出しても、刺す」


 「なんの冗談を・・・」


 声を出した瞬間、背中に何かを押し付けられた。


 「(まさか、本当に差すつもりなのか)」


 「お前は、この息子の件。何もするな」


 「(何故?)」


 疑問を持つも、声を出してはいけないので、何も聞くことができない。


 「分かったら、頷け」


 必死に首を縦に振った。

 背中に押し付けられている物がなくなり、後ろを振り返るとそこには誰もいなかった。

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