第275話 護衛
「あ、そっか。簡単なことだったんだ」
私はポンッと手を叩いた。
「どうしました?」
「フローラさん、冒険者ギルドに護衛の依頼を出してくれませんか?」
「護衛...ですか?」
「はい、そうして貰えれば私が受注しますので、堂々とフローラさんの護衛が出来ます。いくら親が町の有力者だと言っても、冒険者ギルドを敵に回すような真似は出来ないでしょうから、余計なちょっかいを出されることもないでしょう。ちなみに有力者ってどんな立場に居る人なんです?」
「この町の町長を務めている男爵家です」
「なるほど、貴族でしたか。それでも大丈夫です。冒険者ギルドには例え貴族であっても圧力は掛けられませんから」
なにせ多くの国を跨いでいる超国家機関だからね。男爵家程度じゃとてもじゃないが太刀打ち出来るような相手じゃない。
「そうなんですか...」
「では早速...」
「あ、あの! ちょ、ちょっと待って下さい!」
立ち上がろうとした私をフローラさんが慌てて引き留める。
「どうしました?」
「その...お恥ずかしい話ながら、居酒屋の店員っていうのは安月給でして...とてもじゃありませんが護衛を雇うお金なんて...」
フローラさんが真っ赤になっちゃった。
「あぁ、そういうことですか。心配要りませんよ。護衛依頼を出す際、金額の欄に『要相談』と書いてくれれば良いです」
「要相談?」
「はい、つまり依頼を受注した者と相談して金額を決めるってことですね。そこでお互いが満足し合う金額で折り合いが付けば、冒険者ギルドの方に受注金額を報告する義務はありません。だから極端な話、金額が0でも構わない訳ですよ。お互いが納得し合えればね」
「なるほど...いや、ちょっと待って下さい! それだとカリナさんが損をするだけじゃないですか!」
「あぁ、もちろん。さすがに0でいいとは言いませんよ? そうですねぇ...」
そこで私は周りを見渡してみて、
「ここの居酒屋は料理美味しいですか?」
「えっ!? えぇ、それなりには評判になってまして常連さんも付いてますが」
「だったらここの賄いを私にご馳走して下さい。それで手を打ちましょう」
「えぇっ!? そ、それだけでいいんですか!?」
「はい、構いませんよ」
「あの...なんで私にそこまでしてくれるんですか?」
「袖すり合うも他生の縁って言うじゃないですか。縁合って助けた人のことは最後まで面倒みたくなるもんなんですよ。それに同じ女として卑劣なストーカー野郎のことは許せませんからね」
「カリナさん...」
フローラさん、感極まったのか泣いちゃったよ。良し良し、泣かないで。
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