第274話 対策

「ストーカーですか...」


「えぇ、最初は普通のお客さんとしていらしていたんですが、常連さんになってからは私に色々と話し掛けて来るようになりまして...食べ物はなにが好きか? だの、好きな男のタイプは? だの、休みの日はなにをしている? だの色々と聞いてくるようになったんです。ウチの店は居酒屋ですから、酔ったお客さんを相手にするのは慣れてます。だから他のお客さんに対するのと同じように当たり障りのない受け答えをしていたんですが、それが気に入らなかったようで...その内に私の出退勤の時間帯に店の外で待ち伏せするようになりまして...」


「うわぁ...それ典型的なストーカーですね...」


 私はかなり引いた。


「えぇ、それで怖くなったんで町の衛士隊の方に相談したんですが...」


「実際被害に遭わなけりゃ動きようがないって言われたんじゃないですか?」


「はい、おっしゃる通りです...」


「やっぱり...お役所なんてそんなもんですよね...実際被害に遭ってからじゃ遅いってのに...」


 女の人は特に、被害に遭っても泣き寝入りするしかないっていうパターンの人も多いだろうから尚更厳しいよね....


「結局、衛士隊が頼りにならないので自衛するしかありませんでした...わざと出勤時間をズラして、今日は早目に家を出たり、明日は逆にちょっと遅目に家を出たりとかして...それと出来るだけ一人にならないように、帰りは店で一緒に働いている女の子に頼んで、一緒に帰ったりして貰っていました。それで待ち伏せはなくなったんで安心していたんですが...」


「今日、ついに痺れを切らして犯行に及んだと...」


「はい...いきなり裏路地に連れ込まれまして...『なんで俺のことを無視するんだ!』と...」


「困った輩ですね...どうします? 衛士隊に訴えるなら証言しますよ? あれは明らかに犯罪行為でしたからね。さすがに衛士隊も逮捕に動くでしょう」


「それが...」


 だがフローラさんは浮かない顔をしている。


「どうしました?」


「私のストーカーをしている人はこの町の有力者の息子さんなんです...」


「あぁ、なるほど...よっぽどの罪状じゃない限り、握り潰される可能性が高いってことですか...」


 それこそ殺人とかね...


「はい、おっしゃる通りです...」


 これは困ったな...取り敢えず、さっきはプチッと殺らなくて正解だったよ...いきなりこの町でお尋ね者になる所だった...


 フローラさんを助けるためには作戦を練らないとマズそうだね。


 

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