第226話 vs アナコンダ

「燃え尽きろ!」


 そう叫びながらアスカさんが魔道の杖を掲げると、その先から巨大な火球が生まれてアナコンダの周囲に炸裂する。


 アナコンダは蛇でいう所の下半身部分を池というか沼の中に沈めていて、上半身はちょっとした藪の中に入っていたのだが、アスカさんの火球はその藪を吹っ飛ばした。


 驚いたアナコンダが鎌首を擡げる。


「か、カリナさん! す、凄いです、この杖! 私の魔力があんなに上がるなんて! 私は今、火の初級魔法を撃ったつもりだったんですよ! なのにあの威力! これクセになりそうです!」


 そう言ってアスカさんは無邪気にハシャイでいるが、私は未だに燻り続けている藪の方が気になってしまった。


「ねぇ、ラウムさん。ここは湿地帯だから大丈夫かとは思いますが、普段の森の中であんな大火力の魔法使ったら森林火災を起こしませんかね?」


 初めてアスカさんと出会った時はまさしく森の中で、今のように火の魔法をバンバン使っていたのを思い出したのだ。だからちょっと気になって聞いてみた。


「大丈夫じゃないか? 生木ってそんな簡単に燃えたりしないの知ってるだろ? そりゃあ干魃なんかで雨が全く降らずに乾燥してたらヤバいかもだが、滅多にそんなことは起こらないから安心しろ」


 そんなものなのかな? アスカさんはなんだか恍惚とした表情を浮かべながら火の魔法を連打している。私はそんなアスカさんを見ながら複雑な思いを抱いていた。


「あっ!? しまった!」


「アスカ、どうした?」


「ラウムさん、すいません...調子に乗って攻撃していたらやり過ぎたみたいで...アナコンダが水の中に避難してしまいました...」


 確かに...さっきまで鎌首を擡げていたアナコンダの巨体が、今はどこにも見え無くなってしまっている。


「なんだと!? それは厄介だな...水の中に潜ったということは警戒されてしまったな...」


「す、すいません...ど、どうしましょう...」


「そうだな...アスカ、この池というか沼を凍らせられないか?」


「いくらなんでもそれは...すいません、この杖があっても私の魔力じゃあそこまでは無理です...」


「えっ!? アスカさんって氷の魔法も使えるんですか!?」


 私はそっちの方に驚いていた。


「えぇまぁ、火水風土の四大属性は一通り使えます。あまり威力は強くなかったですけどね。今までは」


 その上で治癒の魔法まで使えるとは...ラウムさんが腕の良い魔道士と言っていたのも頷けるな。


「いや、全体じゃなくていい。アナコンダの潜んでいる一角を凍らせて、こっちに誘導してくれたら後は私が仕留める」


「そう言われましても...ここからじゃアナコンダがどこに潜んでいるか分かりませんし...」


「あ、だったらステラさんに乗って攻撃するのはどうですか?」


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