第147話 初体験

 あれから一週間が経過した。


 ステラさんの怪我もすっかり良くなり、今日は初めて新生『エリアーズ』としての初任務を熟すべく、勢い込んで冒険者ギルドにやって来た訳だが...


「ありませんねぇ...」


 うん、分かってた...世の中そんなに甘くないよね...


「魔物を狩りに行きますか。ステラさんの実力も見てみたいし」


「が、頑張ります!」


 こうして私達は近くの森に向かった。



◇◇◇



「じゃあ早速、上空から偵察して来ますね?」


 そう言ってステラさんは服を脱ぎ出した。


「あ、ステラさん。ちょっと待って下さい」


「なにか!?」


「あの、もしかして人を乗せて飛ぶことって可能だったりします?」


 そう、ずっと気になっていたんだよね。


「えぇ、一人までなら。ただし、私は鳥に変化すると「クエッ」とか「グエッ」とかしか発せられませんよ? どうも鳥の口で人語を話すのは難しいみたいです」


「そうなんですね。じゃあ例えば私が乗ったとしたら「右へ」「左へ」って一方的に指示するだけになっちゃうんですね?」


「えぇ、そうです。それでもいいなら」 


「構いません。乗ってみたいです。あ、セリカさんはどうしますか?」


「私は遠慮します。高い所が苦手なんで...」


「分かりました。じゃあちょっと行って来ますんで、魔物に襲われたら瞬間移動で逃げて下さいね?」


「はい、了解です」


「ではステラさん、お願いします」


「じゃあ行きますよ~」


 次の瞬間、ステラさんの体がピカッて光ったと思ったら、そこには巨大な鷲が現れていた。凄いね! どうなってるんだろ?


「それじゃあ失礼しますね~」


 ステラさんが乗り易いように体を屈めてくれたんで、私はよっこいしょとばかりに背中に跨がった。そして首筋に手を回す。


 ふわあああっ! フカフカしてて気持ちいい! それにめっちゃいい匂いがするよ!


「ステラさん、準備いいですよ~」


「クエッ!」


 一声鳴いたステラさんがヒラリと舞い上がる。うわあ! 私飛んでるよ!


「じゃあセリカさん、行って来ますね~」


「行ってらっしゃ~い」


 セリカさんに見送られながら、私は初めての空の旅に出発した。


「ステラさん! 凄いです! 三百六十度の大パノラマ! 絶景かな絶景かな! ステラさんはずっとこの景色を見て来たんですね~!」


「クエッ!」


 私は初めて見る景色に大興奮していた。


 今居る森はずっと向こうにある高い山まで続いていて、後ろを振り返れば王都が見える。遥か地平線の彼方には海だろうか? キラキラ光る水面が見える。


 私は思う存分空の旅を満喫していた。

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