第131話 スタンピード

「なんですって!? 近隣の森にオーガが!?」


「はい、これが証拠の魔石です」 


 取り急ぎ私達は、冒険者ギルドに戻って報告している所だ。受付嬢さんがビックリしている様子を見るに、やっぱり異常な事態が起こっているのは間違いなさそうだ。


「大変だわ...あなた達、ちょっと待っていて! ギルドマスターに報告するから!」


 そう言って受付嬢さんは奥に駆け出して行ってしまった。私とセリカさんは顔を見合わせて肩を竦める。


「お待たせした。おや? 君達だったのか」


 ギルドマスターは慌ててやって来るなり、私達を見てちょっと驚いた表情を浮かべる。まぁ私達がオーガを倒せるとは思わなかったのかもね。


「疑う訳じゃないが、もう一度魔石を見せて貰えるかね?」


「はい、どうぞ」


「...これは...間違いなくオーガの魔石だ...」


「ちなみに牙と角と金棒もありますよ」


 金棒はめっちゃ重かった! 私達二人がかりでも持ち上がらなかったから、そのまま亜空間に収納したんだけどね。


「金に成りそうなもんは全て持ち帰りましょう!」ってセリカさんが言うからさ。だったら自分の空間に収納すりゃいいのにって言ったら「やっぱりまだこんなに重いのは収納するのが怖い」だって。


 魔力は使わないから大丈夫なんだよって言ったのにね。まだまだ今までの刷り込みが根強く残ってるみたいだ。


「いや済まん...疑う訳じゃないんだが...しかし困ったことになったな...」


「と言いますと?」


「ダンジョンの中に居るはずの魔物が外に出るってことは、スタンピードの予兆を表しているんだよ...」


「スタンピード...ダンジョンの外に魔物の群れが飛び出して来ることでしたっけ?」


「あぁそうだ。それを防ぐために魔物の間引きの依頼を出したんだが、こうして魔物が外に出ているのが確認できた以上、間引きに失敗したのかも知れん...とにかく事実確認を急いで行うから、それが済むまで君達も外に出ないように」 


「わ、分かりました...」


「良く知らせてくれた。ありがとう」


 そう言ってギルドマスターは席を立った。私達は顔を見合わせて、


「なんだか大変なことになっちゃいましたね...」


「そうですね...冒険者で止められないとなると、王国の騎士団が出張って来るかも知れません...」


「そうなんですね...」


「えぇ、過去にも何度かあったって聞きました...」


 なんだか不穏な雰囲気になって来たな...


 取り敢えず私達は、言われた通り大人しくしていることにした。

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