第122話 女子会
セリカさんにそう指摘された男は、バツが悪そうに下を向いて唇を噛んでいた。
「なるほど...そりゃあ賊が捕まらない訳ですよね。恐らく自分達で誘拐団の捕縛依頼を請け負ったんでしょう。他の冒険者に邪魔されないように」
「そして冒険者ギルドに居れば、誰が護衛依頼を出して誰がその依頼を引き受けたのかが分かる。私達が依頼を受けたと知った時、女二人なら余裕だとでも思ったんでしょうね。おあいにく様でした」
セリカさんが続いた。図星を突かれたのか男はガックリと項垂れてしまった。
私は男を亜空間に放り込んでから、
「さぁ、では出発しましょうか。コイツらをギルドに引き渡さないと。ヒルダさん、我々は王都に向かうんですが、ご一緒に如何ですか?」
「助かります。私も王都に向かう所だったんです」
こうして旅の仲間が一人増えた私達は、王都を目指して旅を再開することになった。
◇◇◇
すっかり日が暮れてしまったので、その日は野営することにした。賊は捕縛したので大丈夫だとは思うが、念のため御者と馬車含めた全員を亜空間に引き込んだ。
亜空間初体験のナタリアさんとヒルダさんが目を丸くする。夕食はマリス様に貰った備長炭を七輪にくべて火を焚く。
温かい物を食べて場が和んで来た。そうなると女子会のような雰囲気になる。ちなみに御者の男の人は、空気を読んで少し離れた場所に横になっていた。
「へぇ~ ヒルダさんはミルン村の出身なんですか~」
「そうなんです。元々は村で小さな商店を経営してたんですが、ウチの両親は結構野心家でして『一山当ててやる!』とか言って村を出て領都のベガルに店を構えたんですよ」
「ギャンブラーですね~」
「でもそれで成功を収めたんだから、商才があったってことですよ」
「ん~...どうなんでしょうか...結構行き当たりばったりだったような...ところで皆さんはどちらの出身なんですか?」
「私は元々ベガルに住んでました」
「私もそうです。カリナさんは?」
言えない...そこの領主の娘でしたなんて...
「...わ、私も領都出身ですよ。もっとも、つい最近まで隣国に居ましたが...」
うん、ウソは吐いてない。全部言ってないだけ。
「へぇ~ 隣国ですか~ 行ったことないんですよね~」
「私もです」
「私もありません。どんな所なんですか?」
「...良い所ですよ。人も多くて街も大きくて...」
頼むからあんまし突っ込まんでくれぇ~! 答えられることあんま無いんだからぁ~!
「そうそう、隣国にはカリナさんのいい人が居るんですよね~」
「プッハァッ!」
ちょっ! セリカさん何言っちゃってんの!?
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