第47話 養子縁組
「カリナ、今日は来客がある。大事なお客さんだからそのつもりでいてくれ」
その日の朝、執務室でアクセル様にそんなことを言われた。
「はぁ...分かりました」
良く分からないがそう答えておいた。まぁ、私のお客って訳じゃなく、アクセル様のお客なんだから、側に付いてる私に粗相するなよって意味なんだろうな。そう解釈したんだが...
「じゃあ、早速ドレスに着替えてくれ」
「へっ!? な、なんで私が!?」
「今に分かる」
そう言ってアクセル様が指を鳴らすと侍女軍団が現れた。呆然としてる間に、私は侍女軍団にドナドナされて行ったのだった...あ~れ~...
◇◇◇
髪までしっかりセットされ、薄い化粧まで施された私は、久し振りのドレス姿にどうも落ち着かない。最近はずっと騎士服だったからね。
やがて時間になりアクセル様と共に客間へ行くと、そこには品の良い感じの老夫婦が待っていた。私達が近付くと立ち上がり挨拶する。
「カリナ、こちらはフォーサイス元伯爵ご夫妻だ。フォーサイス伯、こちらがカリナだ。よろしく頼む」
「ふぉっふぉっふぉっ、これはこれは可愛らしいお嬢さんですな」
「えぇえぇ、本当に。素敵な方ですわ。これからよろしくお願いしますわね」
「あ、あの、アクセル様。これは一体...」
「これからカリナの養父母になられる方達だ。ほら、ちゃんとご挨拶しなさい」
「ほぇっ!?」
思わず変な声出ちゃったよ! いくらなんでもいきなり過ぎるでしょ!? せめて事前に説明くらいしといてよ!
「前に約束した命を救って貰ったお礼の一つだ。言ったろ? 貴族の身分を用意するって」
「そりゃ確かにおっしゃいましたけど...」
寝耳に水だよ!
「この方達にはカリナの境遇を説明してある。とても同情してくれてな。是非とも自分達の娘にと言って下さったんだ。家格もカリナの元の身分と同じ伯爵位だしな。カリナも満足してくれると思ったんだ。どうだろうか?」
「...とても有難いお話ですけど、私なんかで本当にいいんでしょうか...」
「もちろんですとも! 儂らは既に息子に家督を譲って引退した身ですから、娘というより孫という扱いになると思いますが、それでよろしければ是非とも!」
「私達は孫娘が居ませんから、あなたが孫になってくれるなら大歓迎なんですよ! 是非に!」
夫婦揃ってそう言われちゃ断れないよね...それにもう外堀は埋められてるみたいだし...
「あの...私でよろしければ...よろしくお願い致します...」
「「 こちらこそ! 」」
「おめでとう、カリナ! 今日から君は、カリナ・フォーサイス伯爵令嬢だ!」
...アクセル様、なんだかとっても良い笑顔ですね...
こうして私はまた貴族を名乗ることになった。
どうでもいいけど私が平民だった期間って短か過ぎじゃね?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます