第28話 vs ミネルバ

 閣議が終わり、参加者達が会議室から出て来る。


「アクセル様、お疲れ様でした」


「あぁ、本当に疲れたよ...カリナの方はどうだった? 王宮の地理は大体把握したか?」


「えぇ、まぁ...それ以外にも色々とありましたが...」


「色々とは?」


「詳しくは執務室で」 


 立ち話するような内容じゃないしね。


「それで何があった?」


 執務室に戻り、侍女に入れて貰ったコーヒーを飲みながら、


「実は...」


 私は今日あったことを掻い摘んでアクセル様に報告した。聞いてる内にアクセル様の顔が段々険しくなる。


「そんなことが...済まん、カリナ。王宮の管理不行き届きだ。その侍女達の顔は覚えているんだな?」


「はい。全員覚えております」


「もう一度見掛けたらすぐ報告してくれ」


「分かりました」


「カリナに怪我が無くて本当に良かった...それにしても、空間魔法っていうのはそんな使い方も出来るんだな?」


「えぇ、まぁ...修行しましたから...」


 実家に居た頃、元家族や屋敷の使用人どもから同じ目に合わされたからね...腐った物や汚水が頭の上から降って来るのは日常茶飯事だった...特に腐った卵や牛乳、あの匂いは本当にキツかったっけ...


 私に怪我を負わせない程度の嫌がらせは後を絶たなかったから、なんとかそれに対抗しようと思って必死に努力したんだよね。何度も何度も小さい亜空間を作り出しては失敗し、試行錯誤を繰り返したっけ。


 シールドをマスターしてからは、どんな嫌がらせを受けても私が平然としてるから、ヤツらポカンとしてたっけなぁ。あれは見物だった。


 そんなことを思い出していたら、外が騒がしくなった。なんだろう? と思っていたら、いきなりドアが開いた。


「アクセル様! 聞いて下さい!」


 ミネルバだ。先触れもなくノックもせず部屋に入り込んで来た。挨拶もしない。アクセル様の許可なくいきなり話し始める。どんだけ失礼なんだ、ミネルバ!? その後ろで執事のバルトが「すいません、お止めしたんですが...」と申し訳なさそうにしてる。バルトの制止を振り切ったらしい。


「何事だ!? 騒々しい!」


 アクセル様も不快感を露にする。するとミネルバは私を指差して、


「この女が私の侍女を階段から突き落として怪我を負わせたんです! アクセル様、こんな女は即刻辞めさせるべきですわ!」


 なるほど、そう来たか。どうでもいいけどミネルバ、口調が乱れてんぞ? まぁこっちが素なんだろうが。


 さて、どう料理してやりましょうかね?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る