第12話 王都へ

「え~...ということは、今この瞬間にもお供の方々は王子様のことを探していると...」


「あぁ、うん、まぁ、そうなるな...」


「お気の毒に...」


「うぐっ...」


 さて、どうしたものか。狼は追い払ったけど、この王子様はここから動かせないし。私がお供の人達を探しに行くってのもなんか変だし。困ったな...


 いっそのこと向こうから見付けてくれないもんかな。狼煙でも上げてみるか? あ、そう言えば、


「王子様、火の魔法が使えるんですよね?」


「えっ!? あぁ、まぁ、そこそこは」


「今から亜空間を閉じますんで、そこら辺の草を燃やして狼煙を上げてくれません? そうすればお供の方々が見付けてくれるんじゃないですかね?」


「なるほど...やってみよう」


「じゃあ閉じますね」


「おぉっ! 元に戻った! 凄いな! なんか芝居のセットチェンジを見てるみたいだな!」


 王子様、上手い表現だな。言い得て妙というか。


「火を放つのちょっと待って下さいね?」


 私は周りの草を少しずつ刈り取って行く。延焼を防ぐためだ。狼煙を上げてたら火に包まれましたなんてシャレにならないからね。


 粗方刈り取った草を一ヶ所に集める。風下になるように。


「ふぅ...こんな所ですかね。じゃあ王子様、この草の山を燃やしちゃって下さい」


「分かった『ファイアボール』」 


 おぉっ! 火の玉が飛んでったよ! 私の魔法と違ってカッコいいな!


「うん、いい感じで煙が上がってますね。これならすぐに見付けてくれるんじゃないでしょうか?」


「だといいな...その、カリナ」


「はい?」


「さっきの戦い見事だった。あんな戦い方を見たのは初めてだ。凄かった」


「あ、ありがとうございます。そんなに誉められるとなんか照れますね」


 誉められ慣れてないからね。


「君は旅行者だと言ったな? ウインヘルムから来たのか?」


「はい、そうです」


「目的地はどこなんだ?」


「いえ、特に決めてないです」 


「そうなのか?」


「えぇ、自由気ままな旅なんで。冒険者ギルドのある町を巡ってみようかなって思ってます。私、これでも冒険者なんですよ」


「なるほど...だったら王都に来てみないか?」


「王都ですか。いいですよ。いずれは行こうと思ってましたし」


「良かった。王都に着いたらたっぷりとお礼をするから、そのつもりでいてくれ」


「そんな、お礼なんていいですよ」


「なにを言う! 命を救って貰ったんだぞ? お礼をしない訳にはいかないだろ?」


 え~...なんか面倒臭いことになりそうなんでイヤだなぁ...別にお礼が欲しくて助けた訳じゃないんだよなぁ。


「いえいえ、私なんぞが王子様にお礼を頂くなんて、恐れ多いと思う次第でありまして...」 


「アクセル」


「へっ!?」


「王子様じゃなくてアクセルと呼んで欲しい」


「アクセル...様?」


「ん、よろしい」 


 と、その時だった。


「殿下~! アクセル殿下~! どちらにおられますか~!」


 良かった! お供の人達、狼煙を見付けてくれたんだね!

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