砂浜を歩いていたら美少女に話しかけられた
ちぃーずまん
第1話 砂浜で出会った少女
俺は今日も七里ヶ浜海岸へと足を運ぶ。
学校の帰り道。
嫌なことがあると俺は決まって海岸へ行き、海を眺めながら、ゆったりと歩く。
誰も踏んでいない砂浜の直線を見つけ力強く歩いていき、最後に歩いた足跡の直線を眺める。
これが俺の趣味というか、小さなストレス発散法だ。
今日も一つの信号を渡り、石階段を降り七里ヶ浜の海岸へと降り立つ。
今日は昼ごろまで雨が降っていたせいか海岸の砂がいつもよりかたい。
その分、踏み心地があってなかなかいい。
小さな石橋を渡り、本格的に歩いていくことにする。
今日は他の足跡はあまりなく、どこを選んでも足跡で直線を作れそうだ。
海を見ながら歩いていると今日あった嫌なことも忘れられる。
この果てしなく続く海を見てると自分の悩みなどほんの些細なことに過ぎないのだなと。
歩き始めて10分ほど経った。
後ろを振り返ってちゃんと直線に歩けてるか確認したいが我慢。
楽しみは最後までとっておく派だ。
海を見るのが飽きると次は空を見ながら歩く。
海と同じような色だがまた違う良さがある。
宇宙の果てはどうなってるんだろうとか、
生まれ変わったら鳥になりたいな。とか
いろんな考えや夢ができる。
途中で一旦立ち止まり深呼吸をする。
自然の空気と海の潮っぽさが相まってとても気持ちいい。
目をつむり息を吸って顔を下げ息を吐いた。
と、その時だった。
「一人っ?」
後ろから誰かが声をかけてきた。
声的に女性の声だ。
てか、こんな砂浜の真ん中、一人って分かるだろ。
それにいつから後ろにいたんだ。
全く気がつかなかった。
俺は満を持して後ろを振り返る。
(どうか同じクラスの女子ではないでくれ)
するとそこには可憐な美少女が立っていた。
胸元くらいまであるサラッとした綺麗な黒髪が特徴的でジーパン柄の上着を羽織っており下は白のショートパンツ。
見るからに清楚系美少女。
この海ともなんともマッチしている。
「き、君は?」
「わたしは柏木海音(かいね)っ!
うみにおとって書いて海音って読むの。」
「そ、そうなんだ」
「君は?」
「え?」
「君の名前だよ」
「あ、あぁ俺は、三浦奏太(そうた)
奏でるって字に、太郎の太。」
「そうなんだっ、いい名前だね。」
「ありがとう」
なんか流れで自己紹介とかしちゃったけどこの子は一体なんなんだろう。
見た限り中学生か高校生くらいだけど……
こんな学校が終わって間もない時間なのに私服とか学校行ってないのか?不良なのかな…
「奏太は、高校生?」
いきなり呼び捨て!?と思ったがまあそれはいい。
俺が聞く前に彼女から先にそう聞いてきた。
「そう、ですよ。」
「そうなんだっ、一緒だね。どこの高校?」
「あそこの高校です」
俺は斜め後ろにある自分の学舎を指差す。
「おお!それも一緒だ!」
彼女はそう言ったが、なんで私服なんだろう。まだ学校は終わったばかりだ。
家が学校の真隣にあるとかじゃないとこんな早くは着替えられないと思う。
「柏木さんは、何年生なの?」
「2年生だよっ!」
驚いた。俺と同じ学年じゃないか。
学年は6クラスある。
まあ顔を知らないくらい普通か。
でもこんな美少女が俺の学年にいたとは。
「で、なんで私服なんですか?まだ学校終わったばかりだと思うけど………」
「あっ!言い忘れてた。正確には明日からあの学校の生徒になるんだ!」
「引っ越してきたとかそういう感じ?」
「まあ、そうゆう感じかな」
よく分からないが彼女は一瞬表情を暗くした。
「それで今、学校の手続きとか終わったから海に出てみたんだ!」
「そうだったんだ、まあ明日から一緒の学校ということでよろしくお願いします。」
「よろしくねっ!あとさっきからちょくちょく敬語はいってるけどタメなんだからそんなのいいよ。」
「あ、あごめん俺、女子と話すことほぼないからよく分かんなくて……」
「ぷっ、なにそれ。まさか緊張してる?」
彼女は少し小馬鹿にするような感じで笑った。
「ま、まあ多少は。」
「いいよ緊張なんかしなくてわたしも同じようなものだから」
最後の彼女の言葉の意味は分からなかったがちょっと深刻そうな感じだった。
それより、俺は今まで歩いてきた砂浜を見る。そこには俺の足跡の他にももう一つ足跡がある。そう、彼女のだ。
走ってきたのか、俺が真っ直ぐに付けてきた足跡がかき消されるがごとく、ぐちゃぐちゃになっていた。
あ、あ……せっかくの足跡が……
俺もそんなことで怒るほど器は小さくはないけどね。
「わたし、あそこ行ってみたいな」
そう言い、彼女が指差したのは江ノ島だった
「えと、何島だっけ、猿島?城ヶ島?」
どうやら彼女はこっちにきてほんとに間もないらしい。江ノ島のことも知らないくらい。
「江ノ島ね。歩けばすぐ着くと思うよ」
「一緒にいこ!」
「え?い、いけど親御さんとかは大丈夫?
一緒に来てたんじゃないの?」
「大丈夫、一人で電車で帰れるって言ってあるから」
「そうか。じゃあ行こうか。」
「うんっ!」
そう、彼女は黒い綺麗な髪をなびかせながら頷いた。
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