第4話人生初の人体実験されました。
黒髭の男が連れていかれて3時間ほど経っただろうか、少し慌てた様子でDr.ワクテが戻ってきた。
「少し状況が変わった。大人しく付いてこい。」
そう言いながらツカサの牢屋の扉を開いた。
「たぶんあいつから聞いていると思うが、ここから脱走しようとするのは無謀だからやめておきたまえ」
そう言いながら歩き始めるDr.ワクテにつかさは大人しく付いていく。
ツカサはもともと今脱走する気は毛頭なかったからだ。
2つほど角を曲がったあたりで、Dr.ワクテは立ち止まり部屋に入った。
ツカサも同じくその部屋に入った。
部屋の中は不気味な空間だった。
部屋の中奥にはベッドのようなものが置いてあり、両腕や両足を拘束するためのようなものが付いていた。
部屋のあちこちにチューブのようなものがあるし、手術器具のようなものも散乱していた。
「さぁ、そこに寝転んでくれ」
そういうDr.ワクテの言葉でツカサは確信した。
今から行われるのは黒髭の男が言っていた人体実験だと。
ツカサは事前にこれから激痛を味わうことになると分かっていたので、本能的に思わず後ずさった。
しかし黒髭の男の言葉が頭に響く。
「イカレ研究者のいうことはすぐに従った方がいい。さもないと死ぬほど痛い思いをすることになるからな」
ツカサはなるべく無駄に受ける苦痛を避けたいと思っていた。
そのため現状何か焦っている様子のDr.ワクテに反抗しても悪い方向に進むのは明白だった。
焦ったりして余裕がないときの人間は何もするかわからない、とツカサは知っていた。
ツカサは意を決してベッドに横たわる。
するとDr.ワクテはニンマリと笑い、
「やはり君は逸材のようだ。」
それだけ言うと、ツカサの四肢を固定していく。
そして次に手首や足首などにチューブの繋がった針を刺した。
もちろん麻酔はしていないため、少し痛い。
ツカサは僅かに動く首を回し、Dr.ワクテの方を見る。
すると何やら機械をいじっている様子が見えた。
数十秒ほど経つと部屋の奥の方からウウィーンというなにかの機械が起動する音が聞こえた。
そして同時にツカサの全身に激痛が走る。
「う、ゔゔぁぁぁぁああああ!!」
ツカサは激痛が全身の神経と血管を巡っていく感覚に陥った。
しかし体は拘束されているため、もがくことすらできず、ただ叫んだ。
しかしDr.ワクテは叫んでいるツカサに対して不快に思うことはなかった。
なぜならDr.ワクテにとって実験体たちの悲鳴はその後成果が出るための大事な過程だからだ。
――――――――――――――――――
ツカサはふと目を覚ます。
そこで初めて自分が気絶していたことに気づいた。
未だに針は刺さったままだった。
しかし始めのような激痛は既になく、今は血管に血液以外のものが流れているような不快感に苛まれていた。
「危ない賭けだったが、どうやら神は私に味方をしたようだ!あははははっ!」
ツカサが喜びの感情を含んだ声の元の方を向くと、Dr.ワクテが苦しみながらもしっかりと意識を取り戻したツカサを見て、歓喜していた。
痛みはなくただ不快感が全身を巡る状態が続くこと数時間、ついにツカサは全身を巡る不快感と硬い手術台から解放された。
数時間前までの不機嫌さはどこに行ったのか、すっかり上機嫌のDr.ワクテはひとりでに話を進めていく。
「君にはまだまだやってもらうことがある。早く付いてきてくれ。」
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