第70話
The end of the world 3
窓の外はもはや真っ赤に燃え盛る太陽によって灼熱地獄だった。アリスは自分の屋敷の中でヘレンとオーゼムの話に静かに耳を傾けていた。調度品が溶け、家具は至る所から湯気をだし、着ている服が体中の水分でびっしょりになっていた。アリスの強く握った両手からは汗が床に滴り落ちていく。それでも、オーゼムの顔は何かに勝ち誇るかのように明るかった。
「これが世界の終末の直前の事象なんです。ですが、私はモート君に賭けました。恐らく世界の終末は無事に避けられるでしょうね。もちろん勝算はありますよ」
オーゼムは自信を持った顔を決して崩さなかった。世界の終末でも直立不動で常に勝ち誇った顔をしている。
「オーゼムさん? 私はどうしても納得がいかないんです。どうして我々人類は世界の終末を迎えないといけないのでしょう? 人類は何かをしたのでしょうか? あるいは生命のような寿命のようなものが人類にはあって、それが尽きたのでしょうか?」
ヘレンは腕時計を外しながら汗を拭ってオーゼムに真摯に尋ねているが、アリスは何事にも寿命があることに身震いした。
「ことの発端はジョンなのですよ。人類は単にその道連れなんです。そして、七冊のグリモワールが鍵なんです。ええと、1年前に遡りますが。その頃からジョンはグリモワールを使って、七つの大罪を世界に広めていたのです」
「せ、世界に……ですか?」
アリスはジョンという人物を知らなかったが、犯罪を広めていた張本人なことは薄々わかったつもりだった。ジョン……ジョン・ムーア……確かに……よくある名前なのですが……。確か、昔に聞いた印象的な出来事の人物がそんな名前でした。
「オーゼムさん。ジョンはモートを知っていました。何故? モートとの関わりはまったくないはずです」
ヘレンの問いに、オーゼムはニッコリ微笑んで、
「ジョンはクリフタウンでモート君に一度、ジョンが登山中に凍死寸前だった時に助けられているのですね」
オーゼムの言葉に、いや、皮肉に、アリスはジョンとモートの数奇で歪な運命を感じた。
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