第44話

 モートが今いるヒルズタウンのアリスの屋敷からなら大通りを抜ければ、イーストタウンのロイヤルスター・ブレックファーストの本拠地である店の方が、聖パッセンジャービジョン大学に比べて、数十ブロックも近いのだが。モートはアリスを助けることを優先した。


 モートは、銀色に彩られた高級なレストラン街や、真っ白に凍った銀行にビルディング。ここホワイト・シティのヒルズタウンにある市長の霜の降り氷結と化した邸宅などが見える大通りを走り抜け、逃げ惑う人々の中央を通り抜けながら。聖パッセンジャービジョン大学へと向かってひたすら走った。焦り、悲哀、絶望、恐怖といった感情が強く出ている赤い魂の人々は、風のように身体を通り抜けていく。


 空に浮かぶ髑髏もモートの後を追うかのように、聖パッセンジャービジョン大学へと凍える夜空を流れていった。


 モートは混乱した人々と大雪の降るバスの停留所、車の往来が激しい道路のど真ん中を走る。様々なものをモートは瞬く間に通り過ぎて行った。高級住宅街の色とりどりの家具やオートクチュールのお洒落な洋服。人々の住み処のキッチンにリビング。猿の軍勢と戦う警官や街の自警団などの赤い魂の人々も通り抜けて、聖パッセンジャービジョン大学が見えてきた。


 そのまま、モートは噴水のある庭の中央へと飛び込んだ。


 すぐさま猿の頭の人間。八匹がモートに襲いかかってきた。


 モートが瞬時に銀の大鎌を振り、その場で弧を描いた。水平に並んだ八匹の首全てが一瞬であらぬ方向へと吹っ飛んだ。


 だが、猿の頭の人間はよろめいただけだった。

 その隙に、今まで噴水を囲む花壇に身を隠していたアリスと子供たちは再度、大学内へと走りだした。


 驚いたモートがすかさず銀の大鎌を構え直し、首のない猿たちの胸部に刈り込む。剣を振り回す猿の胸にデカい大穴が空いていった。


 大学内へと避難したアリスはもう安全だろうとモートは考えた。


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