第14話
ここはノブレス・オブリージュ美術館の近辺にあるちょっとお洒落な喫茶店「ポット・カフェ」だった。三人はグレードキャリオンの帰りなので、窓の外はすでに真っ暗な闇で、白い雪も灰色に見える。
ホットコーヒーをそれぞれ三人で頼んでからの約1時間。
オーゼムはモートとアリスに世界の終末について丁寧に話していた。
勿論、オーゼムの話には奇抜な説得力があった。
アリスはコーヒーのお替りを時々ウエイターへ頼みながら「そんなことはありえません!」と、悲しみのあまり強く否定をしていた。
だた、いくら否定をしたとしても、オーゼムの真摯な態度で世界の終末が事実のように思えていきたアリスは、心のどこかでは絶望的な危機感と深い悲しみを持つようになってきていた。
アリスは否定的な態度になることが時間の無駄だったと薄々気が付いてきた。
「アリスさんの気持ちはよくわかります……ですが、これは上層部の話ですので、何者にも覆すことや異論することはできませんし、上層部には人間は何も言えませんよ。なので、私はモート君を探していました。勿論、終末を回避するためです。そして、何故、世界の終末にモート君が必要なのかというと、私の研究でわかったのですが、それは終末を回避するための解決法はモート君が七つの大罪を犯しているものを、その期間内に全て狩ることなのです。世界の終末は、もうすぐですので、その期間は短いでしょうけど……」
オーゼムはそこで俯き加減の顔を上げてニッコリと微笑んだ。
「研究? 七つの大罪? モートがその人たちを狩る?」
アリスには何もかもが不思議で、別の世界の言葉のように聞こえた。
「そうです。これも長年の私の研究での推測ですが、七つの大罪は死に至らしめる怠惰、退廃、堕落が全てに関与しています。つまり、罪を長い年月続けていると、人は罪によって死んでしまうのです。例えば、大食も長い年月続けると、確実に堕落し死んでしまうのです」
オーゼムの淡々とした話を聞いて、アリスは納得した。
確かに人は長期間悪い習慣を続けていると、激怒、傲慢などは身を滅ぼすのが目に見えていた。身体、いや、生命に悪いのだ。例えば、激怒などは、それを20年もの長期間に渡って繰り返すと、人は家庭から会社までを破壊してしまう恐れがある。それか、確実に身体を壊すだろう。
「それは、アリスのためにもなるな。さあ、狩りをしよう」
モートが突然に口を開いて席を立ち真摯な顔で、どこからか現れた銀の大鎌を持っていた。
店内が急に気温が急激に下がったかのように寒くなりだした。
アリスは白い息を吐きながら驚いた。
「今宵も白い月の夜。収穫には持って来いだ」
モートは「行ってくる」とアリスとオーゼムに言った。
ウエイターが目の前のテーブルにお替りのコーヒーを置いたので、アリスは視線をテーブルに戻した。ウエイターの男も酷く寒そうだった。
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