第12話

「いやはや、天界で私の母と賭けをしていました。母はモート君が赤ん坊を助けると賭け。私は反対のモート君は赤ん坊を助けないか、あるいは助けられないに賭けました。ちょっと、ズルをしてしまいましたが。私は元々、赤い魂のことを知っていたのです。早くに助けるつもりでしたが……言っておきますが、命には別状はありませんよ。赤ん坊の真っ赤な顔は、ただの熱さによる怒りの表れです」


 オーゼムはそういうと、モートの顔を覗くように見つめた。

 モートはひどく驚いていたが。それより、赤い魂って一体何なのでしょう? 何が見えるのでしょう? 


 アリスはオーゼムとモートの間に、入れない空間のようなものがあることを知った。決して今の二人の間には入れないのだ。オーゼムはニッコリ笑い。「ほう」と溜息を吐いた。

「モート君はただの常識からくる善行のみで赤ん坊を救いましたね。これでいいんです」

 アリスは困惑して首を傾げてしまった。

「え? ただの常識? ですか……?! そんなことはありません! 素晴らしい優しさですよ! 私はこの目で見ました」

 アリスはモートの良心をどうしても信じたいと思った。

「いや……これは……言っていいのかな? モート君?」

 オーゼムはひどく困った顔で、モートを見たが特にモートは気にしていなかった。

「モート君には、感情がありません。あなたには凄く酷な事ですが……勿論、恋愛感情もないのです。でも、モート君はあなたの声が何よりも一番好きなのですよ」


 シンシンと降る雪が窓際から覗ける。そこを、ほんの少し覗けば、この街が何よりも美しいといえる夜だった。真っ白い月が地上に真っ白な雪を振り撒き、今夜は冷え込みが激しいとアリスは思った。


 アリスはそんなモートを不憫でならないと思ったが、絶対にモートには善意以外があると信じることにした。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る