変体生物
博士はゲル状の物質で満たされた水槽の中を観察していた。そして博士は動物の写真を水槽越しに見せ、そのゲル状の物質が変化するのを待った。
「…」
ひどく揺らぎ、波打ち、不快な音を鳴らしながら、それは形を作っていった。
「…ニャー」
最終的には博士が見せた猫の姿になり、部屋の中を縦横無尽に駆け回った。
「どうだ。たった一枚の画像でほぼ完璧に変身できる、この変体生物は」
粘り気のあるジャンプを変体生物はし始めた。助手はうんざりしながらその生物を捕まえる。しかし助手の手をドロリとすり抜け、猫はまたゲル状の物質に戻ってしまった。
「ははは、しっかり時間が経てば元に戻る仕様さ。これで余計な手間も省けるだろう?」
博士は手慣れた手付きでそれを持ち上げ、再び水槽の中に入れた。
博士はその後も様々な生物で実験をし、ついには一瞬姿を見ただけでもその姿になり、行動が出来るようになった。しかしどうしても出来ない変身があった。それは人間や、架空の生物である。架空の生物は流石の博士も断念したが、人間は何とか変身できるように、何回も博士や助手の姿を見せ、形は保てるようになったのだった。博士はその状態に慣れさせるため、目の前に博士の画像を貼り、その変身状態を継続させた。しばらく経ち、何も異常が無いことを確認すると、博士は寝に行った。
深夜となり、皆寝静まった頃。博士の山に向かって突如として眩しい光が発せられ、その後謎の浮遊物体が山に降り立った。その形容しがたい宇宙船からは、二人の生物が出てきてこう言った。
「さて、今はここで言う『丑三つ時』のようだ。皆寝静まっているはず…手始めにあそこの施設を探ることにしよう」
博士の研究所を指さしたかと思えば、二人は天高く浮遊し、あっという間にその研究所にたどり着いた。
「…鍵がかかっているな。おい、開けてくれ」
一人がそう言うと、もう一人はすかさず鍵に手をかざし、鍵を開けた。そして二人は研究所の戸を開け、目の前に入ったのは直立不動しているあの生物だった。二人は驚き、咄嗟に武器を取り出した。
「むむ、困った。これでは我々の正体が世にバレかねん」
「始末するべきだろう」
瞬間、変体生物が彼らの姿を見た。危険を察知し、すぐさま彼らの体を模す。彼らはその生物を仲間だと信じた。
「ああ、しばらく前に送った調査の者か。どうだった?この星は、支配できそうか?」
そんな言葉が聞き取れるはずもなく、生物は手を伸ばし、足を動かし、ここから逃げようとした。しかし何分見たこともなく、さらに人型の姿をしていたので、すぐさま震え、ゲル状に戻ってしまった。
「な、何だ!死んだのか…?」
「恐ろしい…どんな酷い攻撃を受けたら体がそのようになるのだ…」
彼らは怯え、すぐさま宇宙船に乗り込み、遥か彼方の宇宙へと旅立ってしまった。
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