警霊-ケイレイ-
花道優曇華
序章「始まる警官生活」
第1話「引継ぎ事件①」
本来、警察官になるには警察学校にも入らなければならないし
国家試験にも合格する必要がある。しかしこの課にはそれ以前の
大前提として霊という存在を認識できていなければならない条件が
存在する。警察官としての基本を素っ飛ばして課長に
なってしまった新社会人の卯花美姫だ。
「でも良かったわぁ、美姫ちゃんも良いお仕事に就けて」
母親は意外と楽観的で一先ず彼女が仕事に就けているという
現実に安心している。念のために上記の事を説明したが特に
気にされてはいなかった。
「明日もお仕事でしょ?お休み美姫ちゃん」
翌日の朝。職場には一台のテレビが置かれて誰かが「あっ」と
声を漏らした。
「卯花さんに伝えていない事件の事がありましたね」
「え!?あるの?」
血色の悪い顔の男は頷いた。調子が悪いわけでは無い。
久能仁は先の課長と共に取り掛かっていた事件の簡単な
内容を説明する。女性、それも長髪で霊感を持っているという
限定的な女性が殺された事件だ。髪を利用した術なんかも
あるらしい。
「それが目的って事?」
「そうですね。そう考えています。急な事が色々あったので途中で
捜査を止めていたんですよ。今日から再捜査を開始するところでして」
犯人の特徴も分かっているという。先の課長は過去視を
行うことが出来て、その力で犯人の特徴を得ることが出来た。
「右掌に傷がある。尚且つ、霊能者であり術を知っている。それも死者を
操る術を知っている人物…と」
仁は頷いた。残念ながら美姫は霊能力などこれっぽっちも持っていない。
役立たずではある。
「こんにちは。刑事課の佐々木です」
佐々木高之という男はやってきた。彼がこの事件の担当者だったらしい。
不自然な点が多かったので霊能課にも仕事が回ってきた。
「初めまして。卯花美姫です」
少しぎこちない動きで頭を下げた。高之は穏やかな表情で会釈する。
年上に囲まれたこの職場では彼女以上に異端な存在はいないだろう。
「簡単な話は聞いていますか?」
「まぁ、一応は…。髪の長い女性が殺されて髪を切られているという
事は分かっています」
「それは良かった。あ、でも無理はしないでくださいね?美姫さんは
正直現場慣れはしていませんし…」
気を使ってくれているようだ。その気持ちだけ有難く受け取ろう。
「ところで高之さん、その傷って何ですか?」
高之は一瞬目を丸くした後に自身の右掌を見た。傷だ。
「あー…少しカッターで怪我をしてしまいまして」
「大丈夫ですか?」
「えぇ。もう大丈夫ですよ」
沈黙。先ほどの話で右掌に傷がある男という犯人像があったので
不安で仕方がない。それに周りは気付いていないのだろうか?
この男は霊能者だ。美姫は特殊な目を持っているようで霊力を
視覚で捉えることが出来るらしい。
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