れいんあふたーざれいにー

みなみくん

第1話 前編

「ごめん、こなちゃんの事好きだけど、、そういう好きじゃないんだ」



多分、10年くらい好きだった



もう間もなく僕らは高校を卒業して大学生になる


僕は地元の大学、花音(かのん)は東京の大学に行って一人暮らしをする


小中高と同じ学校だったけれど、これから離れて別の道へ行く


勝手な錯覚だったのだろう

なんかずっと近くに居れる気がして切り出せなかった。頭の何処かで、まあずっと一緒に居るんだしそのうちにって楽観的になっていた



「こなちゃん、実は東京の大学受験してさ。

落ちたら恥ずかしかったから言えなかったんだけど、、受かったよ!東京の大学」



そして、あっちであたし一人暮らしするんだ



その言葉を聞いて思わず、実際のとこ、するんだを花音が言い切る前に10年言えなかった事をあっさり言った僕


そしてあっさり振られた僕



雨が降り出した街の中


思考が定まらずフラフラとさまよって


従兄弟の夕間(ゆうま)の働いてるBARに無意識に辿り着いてお酒を飲んでいた


傘もささずになにしてんのと、夕間は驚きながらもタオルで髪を拭いてくれた


他にお客さんも居なかったからか、ゆっくりと僕が話を切り出さずに俯いていても、カクテルを出して待ってくれてた



「花音ちゃんにふられた?」


エスパーよろしく、一言で言い当てる夕間


「此太がそんな絶望的になるよーなことってそれくらいでしょうに」


なんで分かったかと聞かずとも大正解がくる



「うん、東京の大学行くって聞いてつい」



「いやさ、ずっと一緒だったのは分かるけどさ、花音ちゃんからしたら此太は兄妹みたいなもんで、違ったんじゃない?」


煙草に火をつけながら諭すように言う夕間



僕にもちょーだいと1本貰った



初めての失恋


初めての煙草


初めてのお酒



高校生なわけだし、今迄はここに来てもソフトドリンクだった



今日は出されたカクテル


僕は煙草を片手にそれに口をつけた


煙草は苦いしカクテルはなんかジュースと違う慣れない味がするし、絶賛胃からクレームが響いた




「傍から見たら聞いてなくても此太が花音ちゃん好きなのは丸わかりだったよ。花音ちゃんも気づいてたんじゃないかな。多分だけど。東京の大学に行くのを告げたのは、遠回しにそゆ意味も含んでたんじゃない?別の道だよって、知らんけど」


軽く言ってくれるけど、10年だぞ



じとっと夕間を見る


「日本全国にしたら長年の片思いが実らないなんて溢れた話だよ、珍しい事だけじゃない」



ふー、と煙を吐きながらまたエスパーのように言う



まあ、そやって大人になるこった此太少年


2つしか変わらないのに凄く大人みたいな事を言う夕間



「今日は特別だ、煙草とお酒でショックを紛らわせな。さて、軽く準備するか。」


そう言って、1箱煙草を僕の前に置いて、ひらひらを手を振りキッチンで調理に取り掛かっていった


僕はぐだぐだと何度もため息をつきながらアルコールと煙草をちびちびと嗜んだ


ほんの少しだけ、気が紛れていくような気がした


夕間がパスタをつくってくれて夕食を済ませ、それでも動く気になれず、このままここでこのテーブルと椅子と一生一体化してもいいかななんてくだらない事を思い項垂れていた。


夕間は僕の食事の他にも軽いすぐに出せる料理を作り終えたのか、スマホを弄って退屈そうにしてる


飯食ったし帰れと言われないだけ有難い


少しだけど思いのほか酔ってる感じがするし、まだ帰るわけにはいかない。気分とか抜きで。



そうして僕が店に来て1時間半ほどすると、店のドアが開き、ベルの音がした




思わず視線が行く


いや、そりゃお客さんが来て当たり前なんだけど

急に音がしてびっくりした


「夕間くん久しぶりー!」


一見さんではないのだろう


大学生くらいの少し年上っぽい、夜の街になんら違和感なく馴染みそうな女の人が入ってきた


「おーエリカちゃん久しぶりーっ。1年くらいぶりじゃん」


僕ら学生じゃ、1年も会わなかったらもっとテンションが高い挨拶になるから、ちょっとフラットな夕間を見て、これが大人なのかなと思った



「いやー、10ヶ月で同棲に終止符を打ちまして、解禁しました呑み!」


カウンターは7席空いてるというのに


僕の隣に座り出すエリカというお姉さん



え、空いてんだし離れて座らない?



とも言えず、しばし2人の久しぶりであろう近況報告や挨拶を無言でじっと眺める僕



「あ、そうそう、こいつ従兄弟の此太ってんだ。今日は傷心で荒れてるから相手してやってよエリカちゃん」


突然僕を巻き込む夕間



「へー従兄弟!此太君もお別れして呑み解禁さん?てか若くない?未成年?」


圧が強い


「あ、いえ。お別れではなく失恋しまして。。

はい、未成年です18です。」

律儀に答えてしまう僕



「10年の初恋が実らずやさぐれてんのよ、エリカちゃん先輩として慰めてやってよ。呑んで切り替える大人の処世術をさ」


笑いながら夕間は言う



「へー10年、ピュアっピュアだねー! まあそんなもんさ人生!あたしだって付き合って2年、1年近く同棲した男と別れて呑みに来たんだ!みんなそんなもんだよ少年!」


ばしばし僕の背中を叩くエリカさん



この人もうここ来る前に飲んでるんじゃないか、このテンション






(中編へ続く)

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