第33話

 「二重人格? とは、なんですか?」

 鬼姫は首を傾げた。

 武が寝ている医務室での光姫と鬼姫たちの会話である。皆、せせこましい医務室で丸椅子に座っていた。

 三人組は皆、難しい顔をして口々に言った。

「今まで気が付かなかったとは……」

「不覚です」

「不覚ですね」

 武の怪我はみるみるうちに回復しているようだが、やはりダメージは大きかったのだろう。片腕には未だ血が滲んだ包帯が巻いてあった。

 今も光姫の強い勧めで簡易ベッドで寝かされていた。

「一つの身体に二つの魂があることをいうの」

 高取である。

「さすがに私もわからない。いや、わからなかった」

 高取は立ち上がり光姫となにやら話し出した。

 薬湯を小瓶に注いでいる光姫は、その薬湯の刺激臭に顔をしかめている高取にしっかりと頷いた。

 光姫に高取は何を話したかと言うと、ここからでは聞き取りにくかったが、「このまま武の中にタケルがいるのは、ずっとなの? 武は二重人格のまま?」である。高取は確かにそう言っていたのだ。そう、武の第二の人格が芽生えたのだろう。

 これから、麻生と武の間にタケルがいる。

 不思議なことだが、そうなったのだ。

 麻生はどうだろうか? タケルも武も受け入れたのだろうか?


 だが、私は様子見のために竜宮城へ行かなければならない。四海竜王で残るは最強の北龍のみであるが、気になるところがあるのだ。

 

 









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