第19話
「武。これから、私たちはどうなるの? 私たちは今まで必死にやって来たというのに……龍が強すぎるんだわ……。蓮姫さんたちは、私たちにこれ以上もっと強くなれというのかしら? ……多分そうよね。でも、私、これから先。怖くて仕方がないのよ。いつか本当に……」
再び暗雲に覆われてしまった海である。
湯築は天鳥船丸の甲板で、刀の血振りをした武に死の恐れを含んだ弱音を零していた。鬼姫たちが船室へ戻った後である。
湯築が持っていた神鉄の槍は、すぐに大人の男たちが網で引き上げたようだ。
それにしても鬼姫たちの実力は並大抵ではなく。想像を遥かに上回っていたのであるが。恐らく、私の見立てでは、湯築と高取はまだ修行次第では、更に強くなれるはずだ。
「そうだわ。必死にやってきた。これ以上って、ないわ。無茶よ」
高取は俯いて悔しそうに歯を食いしばっていた。その目は悔し涙も含んでいるのだろうか?
だが、武はそんな二人を応援してくれていた。
「いや……。せっかくここまできたんだし……。きっと……生きて帰れるさ」
武は生きて帰れる方法を模索した。
「今は世界中で安全なところなんてないだし。この先修練はまだまだあるんだ。鬼姫さんの奥義や蓮姫さんの神出鬼没さも。地姫さんの不思議な凄さも。まだまだ奥が深いんだと思う。例えば学校の微積分と同じさ。微積分がない時代の人たちが一生かかって解いた問題でも。今の時代はあっという間に解けるんだし、大丈夫だと思うよ。学校のように考え方や勉強の仕方を使えば生き残る方法は幾らでも探せるはずさ……。そうだ。一度、基本に戻ってみよう。やっぱり基礎が一番大切だと思うんだ。それに、まだ、鬼姫さんたちから戦い方を全て教えてもらったわけじゃないんだしさ。きっと大丈夫」
武は精悍な顔で、学校の時のいつのも調子になって二人を励ましていた。湯築と高取はそんな武を見て唖然としていた。
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