トイレ
中学の頃だったか、私が模型のPFを走らせていたら、フスマを開けて母が顔を出し、そして言うのである。
「その模型にはリアリティが足りない」
なぜか、と問うと、
「足回りにトイレットペーパーがまとわりついていないではないか」
そう言いつつ母は、そこらにあった紙を数ミリ角にちぎり取り、PFの足回りに装備させてくれた。
困ったことにこの話はジョークではなく、実話なのであるが、お若い方にはその意味が分からないかもしれない。
その昔どころか国鉄時代、在来線の車両トイレは、みな直管式であった。
いや実は、全車がそうであったかどうかは知らぬが、オハ50がそうであったことは、はっきり覚えている。
(国鉄の新造車のトイレがいつから直管式でなくなったのかは、興味ある研究テーマであろう)
直管式とは、トイレの排せつ物をタンクにためたりせず、そのまま線路上に流してしまう方式のこと。
「うそだろ」という若い人の声が聞こえてきそうだが、事実は事実。
それゆえ当時の列車トイレのドアには、「停車中は使用するな」と注意書きがあった。
そういう方式であれば、使用済みのトイレットペーパーが車両の足回りにまとわりついているということも、別に珍しくはなかったのだ。
(列車の先頭を行くPFの足回りにまでついていたかどうかは疑問だけれど…)
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