百合ゲームの世界に入ってしまった私はあの子を幸せにしたい
星乃
プロローグ
明日から高校二年生になる。そんな春休み最終日に、私はあるゲームに熱中していた。「桜ヶ丘女学園」という、百合ノベルゲーム。よくある主人公が相手を選んでいくものではない。プレイヤーがいくつかのカップルの中から一組を選び、それぞれの行く末を選択肢でハッピーエンドにもっていく、というものだ。だから、私は今完全なる第三者になって楽しんでいる。
流石に目が疲れてきて、私は一旦眼鏡を外してベッドに寝転がった。そして、あの子のことを考える。
そして、あくまでもサブキャラクターだからか、ちーちゃんには幸せになる描写がない。私にはちーちゃんが一番魅力的に見えているのに。メインのカップルである姫乃&
「姫乃ちゃんが幸せなら」そのセリフと共に、ちーちゃんは姫乃と那月の恋愛をアシストしていく。丁度今そのストーリーをやっている最中で、ちーちゃんの健気さに何度も心を奪われた。
見た目も可愛い、謙虚で好きな人の幸せを第一に願い、自分のことよりも誰かの幸せを喜ぶ心の清らかさ……何故私は彼女を幸せにしてあげられないんだろう。私は起き上がると、やるせない気持ちを机に思いっきりぶつけた。
「いたっ……」
案の定、右手に鈍い痛みが走って顔をしかめていると、ゲームのメニュー画面を映したままのテレビ画面が急に暗転した。それと同時に、机の上に置きっぱなしだった「桜ヶ丘女学園」作中マスコットキャラクター・うめねこのキーホルダーが怪しく光る。
「えっ、壊れた……?」
慌ててテレビに近寄ると、奇妙な音とともに吸い込まれるような感覚がした。重力を感じなくなって、周りがカラフルな模様でいっぱいになる。やがて、視界がぐにゃりと歪んだかと思うと私の意識は薄れていった。
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