第123話 名古屋遠征へ

 葵のバースデーに行って、俺は少し酒が入った状態で家に帰る。


「久しぶりに飲んだな」


 電車に乗って、最寄り駅に着くと、真っ直ぐ家に帰る。


「ただいまー」

「お兄ちゃんおかえり。飲んで来たの?」

「ちょっと付き合いでね」


 そう言って、俺は冷蔵庫の中からペットボトルの水を取り出して飲む。


「お兄ちゃん、女の所行った?」

「なんで?」

「お兄ちゃんから女の匂いがするから」


 女の勘というのだろうか。

女の子はこういうのに敏感な気がする。


「すごいな……」

「まあ、お兄ちゃんは独身だし、別にいいと思うけど、珍しいなと思ってね」

「世話になったキャバ嬢がバースデーだったんだよ」

「ふーん」


 そういうと、瑠奈はソファーに深く座り直した。


「そういえば俺、明日から名古屋だから」

「あー、遠征だっけ? いつ帰ってくるの?」

「5日後だな」


 なんだかんだで、予定を組んでいたら遠征期間が伸びたのだ。

回りたい所が多すぎたのである。


「分かった。気をつけて行ってきてね」

「ありがとう」

「それにしても、お兄ちゃんが5日も居ないなんて初めてかもー」

「確かに、そうかもな」


 瑠奈と一緒に暮らすようになってから、5日も家を開けるということはなかった。

ユメミヤ時代も3日が最長だったような気がする。


「まあ、楽しんできなよ。仕事かもしれないけど」

「そうだな。久しぶりに会える人たちも多いから楽しみだよ」


 ずっと東京に住んでいると、名古屋の人とは気軽に会うことができない。

俺は名古屋にも友人と呼べる人が多いので、楽しみであった。



 ♢


 

 翌朝、俺は着替えなどのお泊まりセットが入っているボストンバッグを持って家を出る。

時刻は朝の6時半だ。瑠奈はまだ寝ているようだったので、静かに家を出る。


 新幹線に乗る為、東京駅へと向う。

莉奈たちメンバーとは東京駅集合にしていた。


 東京駅に着いたのは、約束の時間の十分前。

そこで、少し待っていると、スーツケースを転がしながら莉奈たちが歩いてきた。


「四宮さん、お待たせしましたー」

「おはようございます!」

「四宮さん、おはようございまーす」


 莉奈と友梨は朝から元気だ。

美穂は眠そうにあくびをする。


「おはよう。はい、これチケット」


 俺は三人に新幹線のチケットを渡す。


「ありがとうございます」


 そう言ってチケットを受け取る。


「じゃあ、行こうか」


 新幹線の時間はもうすぐのところまで迫っていた。

改札を抜けると、新幹線のホームで到着を待つ。


「新幹線、久しぶりだー」

「旅行みたいな感じで楽しみだね」

「四宮さん、観光はできるんですか?」


 莉奈たちは嬉々として聞いてくる。


「もちろん出来るよ。最終日は1日観光にしよう思ってて、心強い案内役も頼んであるから」

「さっすが四宮さん!」

「うん、仕事できる」


 莉奈の言葉に、友梨が頷く。


「四宮さんならそのくらいと考えてると思いました。ほら、新幹線きたよ」


 美穂の言葉で、新幹線に乗り込む。


「私たちの席はここですね」


 指定席で取っていたので、チケットに書いてある席に向う。


「新幹線の座席って回転させられるんですよねー」


 莉奈がそう言って、二人席を回転させて、向かい合わせで喋れるようにする。

莉奈と友梨が隣同士で、その対面に俺と美穂が座った。


 そして、新幹線は名古屋方面に向かって出発した。

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