第118話 女の子は怖いのかもしれない

 エレベーターで3階まで行くと、再びスイパラの看板が目に入る。


「行きますよー」


 莉奈が明らかにテンションが上がっていることが伺える。


 料金が先払いになっているようだ。


「どのコースにするの?」


 受付で三種類ほどのコースを提示される。


「この、コースで十分楽しめますよ」


 そう言って、莉奈が70分1400円のコースを指差して言った。


「じゃあ、そのコースにしよっか。これで四人分お願いします」


 俺は財布からお札を出して、四人分の料金を支払った。


「すみません。私たちの分まで払ってもらっちゃって」

「気にしなくていいよ。俺がついて来たんだし」


 席に案内されながら美穂がそっと伝えて来た。


「やっぱり、女の子多いな」


 周りを見回しても中高生くらいの若い女の子が多いと印象である。

所々カップルが居るという感じだ。


 スーツ姿では若干浮くかもしれない。

それ以上に可愛い女の子を三人も引き連れて歩いている俺への視線の方が痛い。


 席に着くと早速取りに行くようである。


「へぇ、スイーツだけじゃないんだな」

「そうなんです! それがまたいいですよね!」


 ケーキは小さな正方形にカットされていてたくさん食べられるようになている。

ケーキ以外にもカレーやパスタ、サラダなどのご飯系も置いてあるようである。


 俺も気になったものを適当に取っていく。


「美穂、お前すごいな……」


 席に戻ると、美穂のお皿の上には大量のチーズケーキが並べられていた。


「美穂ちゃんはチーズケーキが大好きですもんね!」

「うんうん、いっつもそんな感じだよね」


 莉奈と友梨がニコニコしながら言った。


「美味しいじゃん、チーズケーキ」

「確かに美味しいけどさ、そんなに食べたら気持ち悪くなっちゃうよ」

「それな」


 女の子同士の微笑ましい会話を聞きながら、俺もケーキを口に運んでいく。


「そういえば、四宮さんってたくさん知り合いいますよね?」


 食べながら莉奈が言った。


「うん、まあそうかもね」

「どうやって今の人脈を築いて行ったんですか?」

「それ、私も気になってた。まだ若いのにすごいなって」


 莉奈の言葉に美穂が同意する。


「うーん、特に意識したことはないよ。ただその場の縁を大切にしてるだけ」

「本当にそれだけですか?」

「まあ、そのうち話すよ」

「何ですかそれー」


 俺はごまかすようにコーヒーを口に含む。


 莉奈たちは再びケーキを取りに行った。


「女の子って怖いな……」  


 俺の人脈は側から見たらすごいのかもしれない。

しかし、全ての繋がりには始まりがあるのもまた事実。

最初から皆んな仲間だったわけじゃない。


「いつか、話してもいいかもな。あの子たちなら」


 そう呟いて空になったコーヒーカップを眺めた。

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